今から9年前、15歳の時のこと。 僕は「死」をとなりに置いたことがある。 少し暖かくなってきた、冬のよく晴れた日だった。 自分は自分を守るようにできている高校1年生になって少し経った頃、僕は言葉が思うように出なくなっていた。 自分の名前すら、満足に発することができない。 言葉が頭に浮かんでいるのに、どうしても1音目が口から出てこない。 喉は詰まった排水口のようになっていて、声が自分の意図とは違う流れ方をする。 その頃、自分にとって2つの大きな出来事が起きていた。 1つは、母の降りかかる手を掴んで初めて押し返したこと。 それまで”親”だと思い、怖れて、反抗していたのは、自分の力で倒れる一人の人間だった。その瞬間に、自分の中で”親”という存在が壊れた。 母は狂ったように暴れ、爪でえぐられた親指の傷は今でも残っているけれど、それ以来、母の手が降りかかることはなかった。 ”敵”だと思っていた存在が
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く