〔連載〕続 アメリカ医療の光と影 第5回 Harvard Medical Practice Study (医療過誤と医療過誤訴訟) 李 啓充 医師/作家(在ボストン) (2487号よりつづく) 前回(2487号)はDefensive Medicineが米国の医療に蔓延している実状を紹介したが,Defensive Medicineが横行する理由は,「医療過誤訴訟で訴えられたり,訴訟に負けたりしてはかなわない」という恐怖心が医師や病院にあるからに他ならない。 「訴訟は被害者を救済しているか」という疑問に挑んだ歴史的研究 医師や病院をDefensive Medicineに駆り立てている医療過誤訴訟だが,過誤に遭遇することになった患者の被害を訴訟によって救済するという制度は,被害救済制度としてまともに機能しているのだろうか? この疑問に真正面から取り組んだ歴史的な研究が,いわゆる「Harvard