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ブックマーク / newsweekjapan.jp (8)

  • 忍び寄る「次の災害」の脅威

    アレックス・フィッシャーはこの2年間で5回目のハイチ滞在の最中だった。現地で進める活動にようやく進展が見えてきたと、実感していたところだった。 フィッシャーは米コロンビア大学国際地球科学情報ネットワークセンターの科学部門のプログラムコーディネーター。彼が参加する同大学の専門家チームは09年、ハイチが抱える最大の難題のうちの2つに取り組むべく活動を始めた。すなわち、貧困問題と自然災害に対する脆弱性だ。 どちらの問題も、解決の鍵は自然環境の回復にある。そう考えたチームは国連などと協力して「ハイチ再生イニシアチブ」を始動。第1段階として地元政府高官の支持を取り付け、大規模調査に不可欠な技術的能力を育成することに力を入れた。 目標はほぼ達成され、チームは最初の大掛かりなプロジェクト、ハイチ南西部にあるポルタピマン地区の流域再生計画に乗り出そうとしていた。 1月12日の午後5時前、フィッシャーはチー

  • 「今年は地震が多い」は気のせいだ

    ハイチ、チリ、インドネシア、中国──2010年は大地震の当たり年に思えるが、増えているのは地震の数ではない 4月14日、中国青海省でマグニチュード(M)6・9の地震が発生。15日朝の時点で死者は600人以上、負傷者は1万人に上ると推定される。その1週間前には、インドネシアのスマトラ島北西部でM7・7、さらに2日前にはメキシコ北西部のバハカリフォルニア州でM7・2の地震があったばかりだ。 それだけではない。2月末にはチリでM8・8の大地震が発生したし、1月にハイチを襲ったM7・0の地震では、23万人近くが犠牲になった。 大災害がこれだけ続くと、いよいよ世界の終焉かという気がしてくる。そうでないとしても、2010年が地震の「当たり年」であることは確かなように思える。 だが、専門家に言わせれば、そうでもないらしい。米地質調査所(USGS)などの専門家は、地震が頻発しているのではなく、地震への関心

  • 大雪より迷惑、天気ニュースの大氾濫

    たくましい人々 記録的な大雪で政府機関が8日から休業しているワシントン(写真は6日) Yuri Gripas-Reuters 今週のワシントンの一番の話題は、医療保険改革でも対テロ政策でもなく、サラ・ペイリンでさえない。雪だ。雪が降っている、ということだ。 そうだ、雪黙示録やユキマゲドン、雪破壊兵器が迫っている。そうなると、政府機関が閉鎖され、雪合戦をしていたツイーターたちがワシントンD.C.首都警察と武装対立する羽目に陥るぐらいではすまない。信じられないことに、新聞の記事が天気だらけになるのだ! 私は以前、うだるように暑いジャージーシティーの歩道で通行人に「この暑さをどう思いますか」と聞いて歩く仕事をさせられたことがある。その恨みもあるのかもしれないが、とにかく天気のニュースは昔から嫌いだ。天気のニュースはたいてい、パンダのニュースより役に立たないし、商品市況より退屈だから。 もちろん雪

  • ツイッターはハイチを救えない

    昨年夏に行われたイラン大統領選後の暴動は、世界初の「ツイッター革命」といわれた。だとしたら、1月12日にハイチを襲った大地震は世界初の「ツイッター災害」だ。 2004年のインド洋大津波や翌年のハリケーン・カトリーナ以降、メディアの環境は激変したが、ハイチ大地震ではそれが顕著に表れている。ハイチの最新ニュースを読み、共感を示し、援助の方法を調べるために、世界中のツイッターユーザーがサイトにアクセス。ハイチは瞬く間に、ツイッターの「人気のトピック」に躍り出た。 この波に乗ろうと、ニューヨーク・タイムズやCNNなどの既存大手メディアも、ニュースをリストアップするツイッター内の機能を利用し、現地からのアップデート情報を集めたコーナーを設けている。ツイッター熱は、地震発生からしばらくしても衰えなかった。地震から1週間以上経った1月20日には、首都ポルトープランスでの余震をめぐってアクセスが集中し、サ

    ツイッターはハイチを救えない
  • ハイチ取材に食指が動かない理由

    私は(特別研究員として)ハーバード大学にいて、日々拡大するハイチ大地震の惨状と仲間のカメラマンが続々と現地入りする様子を眺めている。生涯同じような現場を撮り続けてきた者として、奇妙な感じだ。現地に行きたくて血が騒ぐかと思ったが、正直それもない。 なぜ、飛んで行きたくならないのだろう。今日1日そのことを考えていたが、これという答えは出なかった。自然災害がもたらす悲劇を前にして、写真にできることはほとんどない。その無力感にうんざりしているのは確かだ。だが、この理屈には欠陥がある。ハイチの当の問題は、自然災害ではなく貧困なのだ。地震は、元から存在した絶対的貧困政治の無責任や混沌を、増幅しただけだ。 米西部の風景でも撮ろうか 他人の不幸を写してその惨めさを切り取ったところで、何の解決にもならない。それもきっと、ハイチに行きたくない理由の一つだろう。私が今ここで幸せだということも。 だが、ハイチ

  • 多重債務国ハイチの意外な債権者

    もう待てない 首都ポルトープランスで救援物資を求めて殺到する人々。地震は債務返済にあえぐハイチにとって大きな痛手だ(17日) Kena Betancur-Reuters アメリカやフランス、日など19の先進国が貧しい債務国の負担軽減策を検討する非公式会合「パリクラブ」(主要債権国会議)が19日、大地震に襲われたカリブ海の小国ハイチに対する債権放棄を正式に呼びかけた。 この画期的な試みは、遅すぎた感もある。ハイチは貧しいだけでなく借金だらけの国だ。一部の債務の起源は1820年代にまでさかのぼる。ハイチを統治していたフランスは当時、独立を承認する代償として現在の通貨価値に換算して200億ドルもの支払いを要求した。 それ以来、ハイチは借金返済に苦しんできた。70年代から80年代に軍事独裁政権を敷いたジャンクロード・デュバリエ元大統領は、国の財政を私物化して債務を増やした。 ハイチは借金でひどく

  • タリバン8年間の真実

    第4章 焦る米軍に長期戦を挑む マシフディン (ヌリスタン州の村バルグ・マタル付近の)山頂にある米軍基地は邪魔だった。あそこの米軍はわれわれの電話や無線を傍受し、アフガン人のスパイと一緒に情報工作を行っていた。だから(今年6月)、われわれは慎重に攻撃計画を練り始めた。 参加者を募ると、みんなが名乗り出た。いつものように医療班を組織し、負傷者を運ぶためのロバや担架もそろえた。だが武器や弾丸、火薬や通信装置を分類したところで、激しい雨が降り始めた。米軍には険しい岩山を登り降りできる頑丈なブーツや山登り用の装具がある。しかし、われわれのは革のサンダルを履いているため滑りやすい。そのため攻撃を2週間延期せざるを得なかった。 ハーン 米軍相手に戦うのは容易ではない。07年夏のある夜、私の司令官だったムラー・ヌールラーが米軍に自宅を急襲されて殺された。米軍は全部で司令官12人を殺害。奇襲はすべて深夜か

  • 陰謀か偶然か――連続地震を結ぶ線

    悪夢の再来 スマトラ沖大地震が発生した04年から約5年で、再び瓦礫の山に(10月1日、インドネシア西スマトラ州パダン) Crack Palinggi-Reuters またしても、南太平洋から衝撃的なニュースが飛び込んできた。9月30日にインドネシアのスマトラ島西岸沖で起きたマグニチュード(M)7.6の地震で、少なくとも1100人が死亡したというのだ(10月1日現在、国連発表による)。そのわずか1日前には、南太平洋サモア諸島沖をM8.0の地震が襲い、津波によって町全体が壊滅、200人近くの死者を出したばかりだった。 世界の終焉が近づいているなどと陰謀論を唱える前に、この2つの地震は地球で最も不安定な地域で起きたことに目を向ける必要がある。この地域は、インドネシアからチリに連なる環太平洋火山帯に属している。世界の地震のうち10回に9回がこの地域で発生しているのだ。 地震学者によると、今回起きた

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