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ブックマーク / omay-yad.hatenadiary.org (12)

  • Jliat “Stilllife#5” - 寡黙で繊細な音盤たち

    ■このCDは強烈である。再生ボタンを押した瞬間ブチッと音がしたあと一向に音がしない。ジリアットはこのスティルライフのシリーズでデータCDを出していたこともある。そこでパソコンに入れてみる。再生ソフトの波形図は静止して何の振幅も無い直線を描いている。しかしCDは走っている。次のトラックにすると波形図は止まったままだが、直線の水平位置は少し上に移動する。更に飛ばすと波形図は同様に静止したままだが、また水平位置が動く。CDプレイヤーにもう一度入れてゲインレベルを確認するとほぼフルビットである。次のトラックにするとゲインはその半分。スピーカーのコーン紙に手を当ててトラックを変えてみるとコーン紙の張り出しの具合が変わる。なんと恐ろしいことに、このCDには微弱な直流信号だけが入っている!ブチッという音は直流が0ボルトから一定レベルに立ち上がった時の電圧差だったのだ。解説にはこう書かれている。 JLIA

    Jliat “Stilllife#5” - 寡黙で繊細な音盤たち
  • 音盤随想<Sim・ライヴ・日本の音楽シーン> - 寡黙で繊細な音盤たち

    Simは大島、大谷、植村の3者による斬新なリズム解釈を持ったバンドである。そこに歌手であり女優であり画家でもある佳村の声や歌が絡む。先日渋谷で彼等のライヴがあった。ファンクの匂いがする大島のギター、大谷の電子音、両者が扱うラップトップの音源には厭世観を匂わせる軽薄さは皆無で、むしろ鍵盤楽器と見做すことできる。そして何よりも植村の超絶ドラミングが音楽を生々しくする。このドラマーの音は驚くべきことに常に一のスパイク信号のように空間に静止ながら正確かつ変則に時間を刻む。まるで懐中時計のメカニズムのようである。そして佳作の声や動作、その存在が音楽をより生々しいものに変えていった。ふと考えると日音楽シーンは今、非常に興味深い様相を呈しているのではないだろうか。Sim、テニスコーツ、オプトラム、POPO、ホース、MUMU、サイトウエレクトリコグッドサウンド、ONJO、スッパマイクロパンチョップ、

    音盤随想<Sim・ライヴ・日本の音楽シーン> - 寡黙で繊細な音盤たち
    youpy
    youpy 2007/02/13
  • あとがき - 寡黙で繊細な音盤たち

    ミッシェル・フーコーの著作「言葉と物(渡辺一民・佐々木明訳)」の序文に古代中国の百科辞典に当時の動物の分類が書かれている。これはホルヘ・ボルヘスの著作に書かれていたものだという。 「動物は次のごとく分けられる。 a:皇帝に属するもの b:香の匂いを放つもの c:飼いならされたもの d:乳呑み豚 e:人魚 f:お話に出てくるもの g:放し飼いの犬 h:この分類自体に含まれているもの i:気違いのように騒ぐもの j:算えきれぬもの k:駱駝の毛のごとく細い毛筆で描かれたもの l:その他 m:今しがた壷を壊したもの n:遠くから蝿のように見えるもの」 古代というのがいつの時代だったか現在著作が手元にないので不明だがこの「分類」そのものが私たちと共有できないものであることは間違いない。太古の時代に進化論など通じるはずはない。しかし、それにしてもこの分類を理解するのは困難を極める。 b、c、e、f、

    あとがき - 寡黙で繊細な音盤たち
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    youpy 2005/12/04
  • James Lee Byars  “Perfect is my death word” - 寡黙で繊細な音盤たち

    バイヤースは怪しげな芸術家である。黒尽くめの服にシルクハット、覆面までして表れ謎めいた作品やパフォーマンスを作ってきた。その活動暦は長く世界的に有名である。 意味深な言葉と金色と黒を多用した作品はどことなく神秘主義的あるいは錬金術的なイメージを漂わし演劇的な印象を受ける。 コンセプチャル・アーティストと認識されているようだが、作品をよく見ていくと、どちらかと言えばシアトリカルな作家と言えよう。文字を印刷した作品やオブジェと彫刻、ドローイング作品の方がパフォーマンスより量は多いが、パフォーマーの作品と捉えた方がしっくりくる。 この作品集は1995年にドイツで行われた展覧会のカタログである。金蒸着CDの作品が付いており、それ以外にも彼の過去の印刷マルチプル作品(一部レプリカ)が多数封入されているので人気があり国内数箇所の専門店に入荷した。この作品集は小さな回顧展のようなものになっている。 最新

    James Lee Byars  “Perfect is my death word” - 寡黙で繊細な音盤たち
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    youpy 2005/12/03
  • Christian Wolff "Stones" - 寡黙で繊細な音盤たち

    クリスチャン・ヴォルフの石を奏でる作品「Stones」はウィーンのEdition Wandelweiser Recordsからリリースされた。 まさにこのレーベルに相応しい作品である。 その大いに注目されるべきでレーベル、Edition WandelweiserはTimescraper Music Publishingの傘下にある楽譜や録音作品などの出版を手がけているレーベルで、沈黙、静寂をテーマに据えた非常に質の高い作品を出版している。CD作品は一切駄作は無くすべてが徹底されている。 どれも長大な静寂空間が立ち表れ、リスナーの真摯な集中力を引き出してくれる。 例えばJohn Cageの「カートリッジ・ミュージック」は、大概が騒々しい雑音の祭典のようなもの認識され粗雑な演奏になる場合がほとんどだが、ここのレーベルから出されると実に静寂で美しい作品となる。このあたりにレーベル主宰のAnton

    Christian Wolff "Stones" - 寡黙で繊細な音盤たち
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    youpy 2005/11/13
    まさに今聴いてた
  • 杉本拓 “Principia Sugimatica” - 寡黙で繊細な音盤たち

    ■このCDは杉拓にとって新境地であろう。この作品での音と余白の関係は明解である。例えば1分間を3つに割ったポイント、20秒おきにギターの短い単音が入る。続いて1分間を4つに割ったポイントにギターの短い単音…という風にある秩序に従って時間を区切り音を配置した作品である。どの曲も分単位できっかり終了する。この演奏は特に楽器のテクニックが無くとも可能である。このCDの体験は、私たちに何を与えるのだろうか。強制的に余白を聞かされるのだろうか。それとも余白部分にリスニング・ルームの環境音を聞くように仕組まれているのだろうか。あるいは余白の美学を体験させようという狙いだろうか。恐らくどれも違うだろう。この音楽は、演奏者とリスナーは彼が設定した秩序に従うかたちになるのだが、その秩序に任せることによって常に纏わりついてしまう曖昧なものがきれいに排除される。時間の単位に沿って行われた作曲・演奏は主観的なも

    杉本拓 “Principia Sugimatica” - 寡黙で繊細な音盤たち
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    youpy 2005/11/04
  • Animist Quartets - 寡黙で繊細な音盤たち

    ■アニミスト・カルテット−精霊主義楽団はジェフ・ジャーマンの手による作品である。彼はHands Toという名の具体音やフィールド録音をイフェクトするノイズ音楽ユニットで古くから活動している。この作品はAlluvial RecordingからCD-Rでリリースされた。レーベル・オーナーのケヴィン・ウィンケはネイティヴ・インディアンを研究している考古学者でもある。ケヴィンの勧めがあったのかジェフは石、枝、貝殻、木の種、松ぼっくり、鳥の骨、花の茎などを使用して小さな音を奏でている。それは擦る、摩る、転がす、揺らす、撫でる、引っ掻くといった微細な所作による響きである。Hands Toのようなイフェクトは一切されていない。作品全体に特に構成的な意図はないようで、淡々とひとつひとつの響きを確かめるような静かな演奏である。乾燥した物体にぱらぱらと小雨が降るような非常に小さな響きである。それらはカセットM

    Animist Quartets - 寡黙で繊細な音盤たち
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    youpy 2005/10/24
    Hands To のジェフ・ジャーマンの作品
  • Atsushi tominaga “056” - 寡黙で繊細な音盤たち

    ■WrKで活動していた富永敦の7インチシングル盤は、家庭用電子レンジに小型スピーカをセットし数分間作動させた記録である。彼の音響作品は電磁誘導による磁力線上の出来事を記録したもので一貫されている。スピーカー2を電線で繋ぎ、一方のコーン紙を手で叩くと電気を通さなくとも、もう片方のコーン紙から微かな音がする。彼はこのシンメトリーな入出力システムに関心を持っており、電磁波の発生する生活機器と観賞用スピーカーがイマジナリーな相似形となることを意図した作品である。そのシステムの途中には人間の聴覚では捉えられない電波空間が介在し、記録物体によって仮初にも時空間の異なる地点、つまりリスナーと作者の間に相似形が形作られるように意図されている。その記録された音響は、チューニングが外れたラジオのような電子的な雑音がゆっくりと表れては消えるもので、過激な音ではなく、現代の生活風景の記録という印象を受ける。片方

    Atsushi tominaga “056” - 寡黙で繊細な音盤たち
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    youpy 2005/10/16
    meeuw muzak からリリースされた富永敦の7 インチシングル
  • wrk V229 - 寡黙で繊細な音盤たち

    ■このWrKの共同作品は、マイクロフォンからアンプを通してスピーカーで再生する過程、 すなわち音声信号を別の空間に搬送する伝達経路とは如何なるものか、ということをテーマに作られた作品である。 toshiya tsunodaは伝達のための情報の変形を扱っている。物理振動を周波数カウンターに入れる。周波数カウンターは入力された周波数を読み取り数値を割り出す測定器である。この機械は、読み取りのために入力される振動を平坦な矩形波に変形する。これは計算のために回路内での翻訳のような処理である。片方のチャンネルにはマイクで録音した物理振動を、もう片方はその音を翻訳された計測信号を収録している。この振幅の揃った矩形波と、振れ幅の自在なサイン波が左右のスピーカーで比較される。 hiroyuki iidaは微弱な電気信号を伝達するための増幅という動作に着目する。増幅器=アンプの設計では信号をどのような比率で

    wrk V229 - 寡黙で繊細な音盤たち
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    youpy 2005/10/12
  • Kyuss “…And The Circus Leaves Town” - 寡黙で繊細な音盤たち

    ■カイアスのサウンドは、ストーナー系と呼ばれる、アメリカのサイケデリックなハードロックである。ブラック・サバスを継承した重く引きずるようなリフを多用した70年代サウンドに現代的なドライな重量感がある。彼らは解散してQueens of the Stone Ageというバンドに発展し活動を続けている。このCDのラストに収められた「Spaceship Landing」という35分以上ある曲にはほとんど音が入っていない。最初の5分くらいは通常の彼らのバンド・サウンドだが、フェードアウトして数分間無音となる。突如練習かデモ録音のようなラフな演奏の断片が1分ぐらい入る。そこからまた17分くらい完全な無音が続く。最後に重いギターによる短い歌が入ってこの曲は終わる。ロック・ミュージックとしては長大なこの無音は一体何だろうか。バンドの音からは静寂というよりは圧迫感のある重い沈黙のような印象を受ける。挿入され

    Kyuss “…And The Circus Leaves Town” - 寡黙で繊細な音盤たち
  • Blind c/w Fragment - 寡黙で繊細な音盤たち

    ■これはUKのTouch傘下のAsh Internationalが、4枚目にリリースしたアナログLPである。内容は飛行機の無線の録音である。短波ラジオに混入するような、電話の盗聴のような音である。速度を読み上げる無表情なパイロットの声が無音の間に散在する。ジャケットに挿入された解説文には録音1978年と記載されている。レコード化されたことで、飛行機の無線は完全に現実から切り離される。95年のリリース当時、爆発的にリリースされていたDJ用のプロモ盤の仕様(レーベル部が白無地)と同じような装丁であることに、何か皮肉めいたものが感じられる。それと同時に、無機的で密かなフェティシズムが窺える。因みに、このLPの前はScannerのデビューLPと12inchEP、Haflar Trioのテクノ12inchEPがリリースされている。Touchに何度かこの作品についての情報を求めたが毎回無反応だった。A

    Blind c/w Fragment - 寡黙で繊細な音盤たち
    youpy
    youpy 2005/09/05
    ハフラートリオのテクノ12インチはダサかったなあ…
  • 寡黙で繊細な音盤たち

    「Tulpas」はrlwの作品を再構築した5枚組CDである。それらは95〜97年の間に制作された音源が収められた古いアルバムである。rlw自らが運営するレーベル、Selektionがテーマのひとつとしている流通の場における情報の変遷という観点から楽曲を拡散・集合させたプロジェクトである。決して安易なリミックスやトリビュート企画ではない。rlwは80年代初頭のノイエ・ドイチェ・ヴェレの動向から更に地下へと進みラディカルな音楽活動を行ってきた。このアルバムにはノイズ寄りの作家から独自の電子工作を編み出した作家たち、あるいはそれらの動向に影響を受けた若手までが隔たりなく集まっている。彼等は互いに孤立して制作を続けていくうちに共通の関心事と幸運な機会によって邂逅し交流が始まっていった。10年前の各作家同士の連絡方法は今とは異なる。インターネットは既に整備されていたが利用はそれほど多くなく、手紙や電

    寡黙で繊細な音盤たち
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    youpy 2005/09/04
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