テーマがテーマだけに、ありがちな覗き見趣味や脳天気な成功者礼賛の本ではないかと心配したものの、杞憂だった。 あたかも別の国のように、他から隔絶して存在する富裕層の社会「リッチスタン」。豪華な車や持ち船、パーティーにリゾート、豪邸の中で使用人にかしずかれる生活---。人も羨む暮らしのはずなのに、読んでいてあまり羨ましくないのはなぜだろう。新旧の富裕層の反目、社会的信用の維持や単なる見栄のため収入以上に行われる浪費、短期間に築かれた富がやはり短期間に消えていく不安定さ、子供たちの将来への不安など、富がもたらす影の部分についてもきちんと描かれているからだろうか。一方で、新たな形の慈善事業の立ち上げや、必ずしも自分たちの利害を代弁しない政治勢力への肩入れなど、わずかな希望を抱かせる内容もある。 ただ、読んでいてどこか割り切れない気持ちを覚えるのは、著者の視点が基本的に、「経済的に成功する者」即ち「