日系米国人の心理学者ジェームズ・サコダが開発した分析手法「エージェント・ベースト・モデル」は現在、疫学をはじめとする幅広い分野に活用されているが、彼の功績を知る人は日本でも少ない。なぜ、サコダの偉業は歴史に埋もれてしまったのか。米紙が関係者に取材し、その謎を明らかにした。 日系米国人のジェームズ・サコダは第二次世界大戦中、他の12万人の同胞とともに強制収容所に送られた。だが彼は、他の者にはない「ある任務」を負っていた。収容所での体験を「記録」することだ。 サコダは国家反逆罪やスパイ罪に問われないよう、1800ページにもおよぶその文書の大部分を秘密裏に保管した。 サコダが残した膨大な記録は、彼が1949年に発表した学位論文の基礎資料となった。テーマは、米アイダホ州のミニドカ強制収容所に収容された個人と集団の相互作用だ。付録の一部として収録された被収容者の行動記録は、エージェント・ベースト・モ