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![イアン・ハッキング『偶然を飼いならす: 統計学と第二次科学革命』 | Theoretical Sociology](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/5a5d520f4a2ef1f81ce07608d0cedc0de04ada45/height=288;version=1;width=512/http%3A%2F%2Fecx.images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F51fhvRbqkWL._SL160_.jpg)
来年度の卒論指導に向けて、今年度の反省や感想を簡単にまとめておこうと思う。今年感じたのは、 アニメやマンガなどを批評する卒論は難しそうだということである。なぜか流行歌の研究は比較的うまくいっているような気がするし、アニメや漫画、ゲームなどにしても、必ず失敗することを運命づけられているというわけではないだろうが、これまでの卒論の例を見る限り、失敗率が高そうな気がする。印象論で言うと、失敗率が高い理由は3つ考えられる。 まず、深く考えず安易にメディア批評を選ぶ学生が多いこと。メディア現象は身近な社会現象だろうし、メディア批評の中には面白いものもある。学生がこういったテーマに魅力を感じるのはよく理解できるのだが、読んで面白いからといって自分が面白いものをかけるとは限らない。メディア批評の論文が『社会学評論』や『ソシオロジ』のような主要な社会学雑誌に載ることはまれだと思うが、それはメディア批評をオ
Clara. H. Mulder and Maarten van Ham, 2005, "Migration histories and occupational achievement," Population Space and Place, Vol.11 No.3, pp.173-186. 移住履歴と職業的地位達成の関係についてオランダのデータで検証した論文。居住地や地理的移動と社会的地位のあいだに関係があることはよく知られた事実である。Mulder and van Ham は両者の関係について以下のような仮説をあげている。 移住者は高い地位に到達しやすい。転居のコストを払ってまでも移住するわけであるから、それにみあった社会経済的地位をえられる見込みがある場合が多いと考えられる。地元に残っていては仕事がないから移住するという消極的な理由の場合もあろうが、その場合でも地元に残るよりは移
Michaela De Soucey, 2010, "Gastronationalism: Food Traditions and Authenticity Politics in the European Union," American Sociological Review, Vol.75 No.3, pp.432-455. ヨーロッパ共同体 (EU) における食物保護政策の程度とフランスにおけるフォアグラとナショナリズムの関係を論じた論文。マクドナルド化論に代表されるように、グローバル化に伴い、合理化と均一化が進むという主張がしばしばなされる。そのような合理化と均一化は食の領域におけるマクドナルドのようなファースト・フードの隆盛に象徴される。しかし、De Sourcey によれば、それとは逆の動きもある。 EU では EU 圏内の伝統的食文化を守るため、特定の品名に関しては、一定の
Michael B. Miller, 1995, "Coefficient alpha: A basic introduction from the perspectives of classical test theory and structural equation modeling," Structural Equation Modeling: A Multidisciplinary Journal, Vol.2 No.3, pp.255-273. 原著論文ではなく、TEACHER'S CORNER というコーナーの記事。アルファ係数の意味などについて解説してある。面白かったのは、確証的因子分析の枠組みでアルファについて解釈してある点。アルファは、本質的タウ同値 (essential tau-equivalence) を仮定するので、右側のほうの図のようなモデルを想定していると考え
John Friedmann, 1986, "The World City Hypothesis," Development and Change, Vol.17 No.1, pp.69-83. 雑誌の特集の冒頭で、世界都市仮説を概説した論文。Friedmann によれば、国際的な分業に深く巻き込まれ、その中で本社機能や金融の中心の役割を果たす都市が世界都市で、ニューヨークやロンドンが代表的である。このような世界都市では、本社機能、金融、国際的な交通と通信、ビジネス向けサービス(広告、会計、保険、法務)が発展し、第二次産業の規模は縮小する。これに伴って職業は二極化した分布を持ち、上層では専門職や管理職が、下層では非熟練のマニュアル、ノンマニュアル職の比率が高くなるという。半周辺国では、急速な人口増加のために、地方から世界都市に向かって大量の移民が押し寄せることになる。このような移民は国内で
James Moody and Douglas R. White, 2003, "Structural Cohesion and Embeddedness: A Hierarchical Concept of Social Groups," American Sociological Review, Vol.68 No.1, pp.103-127. ネットワークの凝集性を示す新たな指標を提案した論文。ある(グラフ理論的な意味での)グラフにおいて、すべてのノードがパスでつながれている場合、そのグラフは接続されている (connected) という。しかし、特定のノードを取り除くと、グラフは複数に分割され、接続は失われてしまうことがある。たとえば、コンピュータネットワークでアクセスの集中するハブが1つでも故障すると、到達できないノード(この場合はサーバや個々の端末)が大量に発生することがある。
Jeppe Nicolaisen, 2007, "Citation Analysis," Annual Review of Information Science and Technology, Vol.41 pp.609-641. 引用 (citation) に関する諸理論をレビューした論文。「研究者はなぜ論文を引用するのか?」という問いをめぐるいくつかの理論を紹介し、それに対する批判も併せてレビューしてある。これはインパクト・スコアのような被引用回数にもとづく指標が何を意味するのか、という問題と深くかかわるので、かなりたくさん論文が書かれている。Nicolaisen は以下のような理論を紹介している。 レリヴァンス理論の応用。著者が論文を書く上でレリヴァントな論文が引用されるとする理論らしい。ここでいうレリヴァンスとは、スペルベルとウィルソンのレリヴァンス論でいうところのレリヴァンスで
James Moody, 2004, "The Structure of a Social Science Collaboration Network: Disciplinary Cohesion from 1963 to 1999," American Sociological Review, Vol.69 No.2, pp.213-238. 社会学関連の文献の共著ネットワークの構造を分析した論文。データは Sociological Abstracts 掲載の英語論文で、社会学およびその関連分野の論文(本は除く)の著者の情報を使っている。共著で論文を書いているとそれらの著者はつながっているとみなされる。Sociological Abstracts 1963−1999 で約 33% が共著論文なので、そこそこネットワークのデータとして使える感じである。ネットワーク構造については、スモール・
S.P. Borgatti and M.G. Everett, 2000, "Models of core/periphery structures," Social networks, Vol.21 No.4, pp.375-395. ネットワーク内の中核・周縁構造をモデリングして、パラメータの推定およびモデルのフィッティングを検討する方法を考案した研究。離散型と連続型の2モデルが考案されている。まず離散型。ネットワーク論で中核・周縁という場合、中核のノードは互いに緊密に結びついている(つまりサブグラフの密度が高い)が、周縁のノードはお互いにつながっておらず、周縁は中核とだけつながっているような状況をさす。つまり、中核を中心にしたスター型のネットワークになる(Fig 3 (p.380 より転載)参照)。 実際のネットワークはこれほどきれいな中核・周縁構造にはなっていないが、できるだけ密度
J.M. Roberts, 2000, "Correspondence analysis of two-mode network data," Social Networks, Vol.22 No.1, pp.65-72. Borgatti and Everett (1997) の対応分析批判に対する反論論文。2モード・ネットワーク・データとは、2部グラフとか、所属行列とかも言われるもので、行に行為者、列に行為者が所属する団体を配して、行為者の団体の所属を行列で表現したもの。これを対応分析にかけて、行為者と団体を他次元空間上にプロットすることにたいして、Borgatti and Everett (1997) は批判的であったらしい。これに対して Roberts は 2モード・ネットワーク・データに対しても対応分析は一定の有効性があると主張している。 確かに対応分析してもそれほどおかしな結果
The Sociology of Spatial Inequality この商品の他のレビューをみる» State Univ of New York Pr ¥ 2,925 (2007-05-10) Linda M. Lobao, Gregory Hooks and Ann R. Tickamyer, 2007, "Introduction: Advancing the Sociology of Spatial Inequality," Linda M. Lobao, Gregory Hooks and Ann R. Tickamyer (esd.) The Sociology of Spatial Inequality, State University of New York Press, 1-25. David A. Cotter and Joan M. Hermsen and Ree
Michèle Lamont and Virág Molnár, 2002, "The Study of Boundaries in the Social Sciences," Annual Review Sociology, Vol.28 pp.167-195. (a) 社会的・集合的アイデンティティ論、(b) 階級・ジェンダー・エスニシティ論、(c) 専門職・知識・科学論、(d)コミュニティ、ネイション、地域境界論、といった境界 (boundaries) に関する研究をレビューした論文。とりたてて注目すべき議論がなされているわけではないが、おもしろそうな文献がいくつか参照されているので役には立つ。境界の研究は、境界が創造されたり、再生産されたり、変容されたりするさまを記述したり、その原因を説明する研究である。著者は、 symbolic boundary と social boundar
抵抗の快楽―ポピュラーカルチャーの記号論 (SEKAISHISO SEMINAR) この商品の他のレビューをみる» 評価: ジョン フィスク 世界思想社 ¥ 2,730 (1998-07) 盛山先生がカルチュラル・スタディーズの例としてこの本をあげていたので、質的データ分析の講義のために読んでみたが、あまりに陳腐なので1章と2章だけ読んで投げ出してしまった。「こんな見方もできます」型の典型的なケースであろう。著者は、ポピュラー・カルチャーを資本制または家父長制からの「逃走」または、それらに対する「抵抗」として読み解く。例えば、ショッピング・モールで失業中の若者がたむろすることは、資本制に対する「抵抗」とみなすこともできるそうである。そういう「見方」も確かに可能であろう。出生率の低下も家父長制に対する若者の「抵抗」あるいはそれからの「逃走」の結果だという「見方」も可能であろうし、大学で講義中
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