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ブックマーク / www.issj.net (6)

  • 連載 システムの肥大と人間の想像力 第6回 個人の生き方がそのままシステムにはね返る

    今回の東京電力福島第一原子力発電所の事故であらためて痛感したのは、原発に賛成するにしろ反対するにしろ、事故が起これば平等に放射能(放射線)が降ってくる、ということだった。国土の狭い日にいつの間にか54基もの原発ができていた事実に無知、あるいは無関心だったことへの反省もあった。前回、アメリカ経済学者、ジョン・ガルブレイスのinnocent fraud(悪意なき欺瞞)という言葉を借りて表現したかったのはそのことだが、同じような思いを抱いた人は多かったようだ。 朝日新聞5月17日付朝刊の「時事小言」というコラムで、国際政治学者の藤原帰一は「コンスピラシー・オブ・サイレンス、暗黙の陰謀という英語表現がある。目前の状況から目を背け、不正の横行や危険の拡大を見逃してしまう。原発事故を前にして感じたのは、それだった。原子力発電の危険性から目を背けてきたという、砂を噛むような思いである」と書いている。

  • 連載 システムの肥大と人間の想像力 第5回 東北関東大震災とinnocent fraud

    今回の地震および津波で亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。同時に、被災したすべての方に心からお見舞い申し上げます。 地震が起こったのは2011年3月11日午後2時46分だが、私はそのときイタリアから帰国する飛行機で成田上空にさしかかっていた。日を大きな地震が襲ったらしいとの機内アナウンスがあったが、地上管制塔との交信も途絶えがちで、飛行機はしばらく上空を旋回したあと、早々と函館に着陸した。給油後に成田か羽田に戻る予定だったが、両空港への許可は下りず、結局その日は函館泊。翌午後1時すぎ同じ飛行機で成田に向かい、午後3時に到着。開通し始めた総武線快速で東京まで出て、東京からこれも開通したばかりの東海道線に乗って大船に着いた。迎えに来てくれた娘の車で自宅に戻った。 マグネチュード9.0の地震、ついで襲った大津波。戦後最大規模の自然災害に、人災とも言うべき東京電力福島第一原子力発電所の大事故

  • 連載 システムの肥大と人間の想像力 第4回 Googleの野望にどう対応するのか

    サイバーリテラシーの観点から見た、サイバー空間と現実世界の関係史の第4段階の図で、現実世界(上)がサイバー空間(下)の上にそっくり乗っかった、現代IT社会の姿を示している。サイバーリテラシー研究所のウエブに第1段階から3段階に至る図が表示してあるが(1)、第1段階に比べると、現実世界とサイバー空間の位置関係が逆転しているところが肝心なところである。 これまで支配的だったり、合理的だったりした既存の社会秩序が、サイバー空間(インターネット)によって激しく揺れ動いている。そして、このサイバー空間の情報をすべて握ろうというのがグーグルの野望である。「Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることです(Google’s mission is to organize the world‘s information and make it univers

  • 連載 システムの肥大と人間の想像力 第2回 TigerTextと「情報の時効」

    2010年春、アメリカで「タイガーテキスト」というアイフォン(iPhone)のアプリケーションが話題になった。日ではまだ利用できないようだが、このソフトウエアを使って送ったメールは、送信者が設定した期限がたつと、自分の端末からも、相手の端末からも、さらには特別に設置されたサーバーからも削除される。存続期間は送信者が設定できるし、相手が読んだら1分後には消えるように設定もできる。 ふだん私たちがやり取りしているメールは、送信者が削除しても、相手が保存しておけば存続するし、プロバイダーなどのメールサーバーには一定期間、保存されている。タイガーテキストを使って送信したメールは、サイバー空間から完全に削除できるというのが工夫である。 このアプリケーションを開発したベンチャー企業、X Sigma Partnersの創業者、ジェフリー・エバンズは開発の意図を、「しゃべるように気軽に書いたテキストが、

  • 連載 システムの肥大と人間の想像力 第1回 「等身大精神」の危機

    はじめに 旧知のメールマガジン編集長から「矢野さんが提唱するサイバーリテラシーと情報システム学会の理念は似たところがある。サイバーリテラシーについて連載してみませんか」とのお誘いを受けた。なるほど、情報システム学会の理念には「真に人間中心の情報社会を実現することに貢献する」と書いてある。 わが意を得たり(^o^)、と引き受けたのは、あるいは軽率だったかもしれない。私は技術の専門家でも、法律の専門家でもない。一介の編集者である。いささか逡巡気味ではあるが、編集者として、あるいはジャーナリストとして、ここ30年、情報社会の周辺を徘徊してきたことだけは確かである。情報社会のリテラシーとしての「サイバーリテラシー」を提唱してすでに10年近くにもなる。せっかくの機会をいただいたのだから、サイバーリテラシーの観点から気になっている現代社会のあれこれを書きつけて、情報社会や技術の最先端におられる諸兄姉

  • 連載 システムの肥大と人間の想像力 第3回 「あいまい領域」の構築

    横綱白鵬の連勝記録は63で止まった。双葉山の69連勝に届かなかったわけである。これを報じた日経済新聞のスポーツ欄に、双葉山が70勝を達成できなかったときのエピソードが紹介されていた。 陽明学者の竹葉秀雄氏が気遣って電報を打った。「サクモヨシ チルモマタヨシ サクラバナ」。これに対する双葉山の返電が「ワレ イマダ モッケイニアラズ」だったが、記事によると、そのあと双葉山は竹葉氏に「サミシイデス スグオイデコウ」と打電したという(1)。 ここに心を打たれる。 偉丈夫がその大きな体に、深い悔恨とかすかな安堵感を背負って坐っている。通信手段が電報だったことは、自分と対話する十分な時間を与えたことだろう。ケータイと違うのはそのところである。 昔、「めぐり逢い」(1957年公開)というハリウッド映画があった。年配の方は懐かしく思い出すだろうが、ケーリー・グラントとデボラ・カーが競演したメロドラマであ

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