今回の東京電力福島第一原子力発電所の事故であらためて痛感したのは、原発に賛成するにしろ反対するにしろ、事故が起これば平等に放射能(放射線)が降ってくる、ということだった。国土の狭い日本にいつの間にか54基もの原発ができていた事実に無知、あるいは無関心だったことへの反省もあった。前回、アメリカの経済学者、ジョン・ガルブレイスのinnocent fraud(悪意なき欺瞞)という言葉を借りて表現したかったのはそのことだが、同じような思いを抱いた人は多かったようだ。 朝日新聞5月17日付朝刊の「時事小言」というコラムで、国際政治学者の藤原帰一は「コンスピラシー・オブ・サイレンス、暗黙の陰謀という英語表現がある。目前の状況から目を背け、不正の横行や危険の拡大を見逃してしまう。原発事故を前にして感じたのは、それだった。原子力発電の危険性から目を背けてきたという、砂を噛むような思いである」と書いている。