ちゃんぽんに海の幸、異国情緒あふれる街並みや自然豊かな島々――「長崎県」といって思い浮かぶイメージは、どちらかというとそんな「魅力的な観光地」というものではないだろうか。だが実はこの数年、県や地元大学などを中心にICT戦略に力を入れている一面もある。 既に富士フイルムソフトウエアや京セラコミュニケーションシステムが新たな開発拠点として長崎に進出している他、続々と新たな企業が拠点の設置に動いている。並行して、「情報データ科学部」を新設した長崎大学をはじめとする県内大学がIT人材の育成を強化している。いわばエンジニアが力を発揮し、イノベーションを生み出す場になりつつあるのだ。 江戸時代後半、学問を志す全国各地の優秀な人材は、外国から入ってくるさまざまな最新の知識に触れたいと、鎖国体制の中で世界に開かれていた窓である長崎を目指した。そこで培われ、共有されたナレッジと人脈が、明治維新以降の新しい世