■■第1章:十字軍遠征の政治的真相とは ●宗教に起因する戦争は多数ある。宗教をめぐっての争いは絶えなかった。しかし、そのほとんどがヨーロッパ周辺で起き、しかもキリスト教をめぐってのものであったことを歴史は示している。大別すれば、一つは異教(徒)を弾圧・排除するための戦争であり、もう一つは「権力装置」としてのキリスト教(教会)に対する、いわば反乱の戦いである。 ユダヤ教の成立とほぼ同時期に出現した仏教、ヒンズー教、あるいは紀元7世紀に登場するイスラム教などの生成・発展の過程にも、この種の争いが皆無であったとはいえないが、その独善性、排他性の激しさにおいて、キリスト教のそれは言語を絶するものである。 ◆ ●キリスト教による異教徒弾圧として、もっとも有名なのは、合計8回にわたって繰り返された十字軍の遠征だろう。この十字軍の遠征は約200年間続き、犠牲者は何百万人とは言わないまでも相当な数にのぼっ