本来、芸人とは日常生活の埒外に棲息する人間たちである。舞台の上に立つ彼らの目は醒めている。客席の機微を肌で感じながら、ネタを調節して笑いを取っていく。彼らには〝笑われているのではない、芸で笑わせているのだ〟という強い矜持がある――これはノンフィクション作家・田崎健太がベテラン芸人に取材し、その人生を描き出した『全身芸人』(太田出版)の書き出しだ。 芸人は躯ひとつで観客と日々対峙し、笑いでねじふせる、逞しい人間たちである。そして笑いは刹那でもある。笑いは時代にぴったりと寄り添い、世間を席巻した笑いもあっという間に風化し、使い捨てにされる。 特にテレビは残酷である。そんな中、彼らは何を考え、どう生き残ろうとしているのか。 ハチミツ二郎は芸人が認める、芸人の中の芸人、若き〝全身芸人〟だ。テレビ、舞台、プロレス、ビートたけし、立川談志――田崎とハチミツ二郎が、長州力のいきつけの居酒屋で酒を酌み交わ
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