ところで、全てのお笑い芸人が、というより、一部を除いて、ほとんどの表現者は皆、過去自分の好きだった世界に飛び込んでいると思う。 ところが、そうでもない人が一人いる。それがビートたけしだ。 我々はビートたけしになりたくてこの世界に飛び込んだくちだ。 しかし、お笑いが好きだから、とか甘ったるいことを言ってる時点でもう「たけし」にはなれない。 絶対に種明かししてはいないが、思うにビートたけし、否、足立区の北野武君は、勝てる世界だと選んでこの世界に飛び込んできたと思う。 そこには好きだの嫌いだの、憧れとか、そんな生易しいロマンティシズムはなく、あるのは恐ろしく戦術的な冷めたリアリズムだ。 後にたけし氏は「死に場所を探して浅草へ行った」と述懐している。 そんな耳障りのいい言葉で煙に巻いて我々をウットリさせているが、そんなもんじゃなかったはずだ。 当時のたけし氏にしてみれば、浅草は、芸