「人質司法」――この言葉が目にするようになって久しい。 検察の主張を認めない被疑者・被告人に対して、身柄拘束がいつまでも続くという恐怖や不安を抱かせ、その心理を利用して、捜査段階での自白、裁判での起訴内容の認容、そして有罪判決へと導くことを言う。具体的には、実質は1つの事件を捜査機関が複数の罪名に分割して再逮捕を繰り返したり、否認している被告人の保釈に強く反対したりして、身柄拘束を長期間続けるようにする。 この言葉が、弁護士たちの間だけでなく、メディアにも登場するようになったのはいつか。記事データベースを引くと、最も古い記事としてヒットしたのは、1990年7月28日付西日本新聞朝刊に掲載された連載企画「裁判所・法服の肖像」後編〈7〉だった。 〈弁護士がよく使う言葉に「人質司法」というのがある。拘置中の被告人の保釈を裁判官が拒むケースが近年、急増。被告人が長期間拘置されて不利益を被っているこ