かがんで目の高さを合わせ、おかあさんと呼びかけるとその人は振りかえり、やがて、彼女の名を呼んだ。彼女は首まで赤くして、でも泣くのはどうにか回避して、その人の手を取った。すげえなと彼は、小さくもない声で口にする。もう俺のことだってよくわかんないのに。相変わらず無神経なやつだと、彼女は思う。おかあさんが、ここで、聞いているじゃないか。 若くして彼を生んだのかしらと、初対面で彼女は思った。恋人の母はなんだかつやつやとしてきれいだった。大きい声で笑い、愉快そうに話して、ねえ私あなた大好きと、遠慮のない感情表現をしてみせるのだった。おかあさん怒ったら怖いんじゃないのと、彼女が彼に尋ねると、怖い怖いと彼はこたえた。そりゃもう、箒もって追いかけ回すからね、もう完全に本気、だからこっちも必死で逃げた。おかあさんは機嫌よく笑って彼女に地元のお酒をすすめ、自分もくいくいと飲みながら、だってあんた、ろくなことし
![私のおかあさん - 傘をひらいて、空を](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/06a15c64ba0ceec233d86d71001ebb29a9dcbf5d/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fcdn.blog.st-hatena.com%2Fimages%2Ftheme%2Fog-image-1500.png)