私は生まれつきの先天性色覚異常という目の障害があって、赤と緑に関連する色の識別が難しい。識別できる場合もあるのだが、たとえば緑色の草のなかに赤色の花が混じっていても全部緑色に見えることが多いし、熱っぽい顔だとか、生焼けの肉だとか、そういった「赤み」はまったく見えない。赤みという色合いがあるのは情報として頭で理解してはいるが、自分の目で実際に赤みが見えたことは一度もない。 小学生の頃は、青と紫の違いがわからなかった。紫は青に赤みが加わった色だから、この赤みが抜けて青に見えてしまうのである。私にとって青と紫はほとんど同じ色で、紫のほうが若干暗いと感じることだけが、強いて言えば青と紫の違いだった。 だから図工の時間に外で絵を描くときには、空の色を紫で描いたこともあった。私にしてみれば、絵具セットには青色と暗い青色(紫)が並んでおり、どちらを使うかは気分次第で決めるというような違いでしかなかった。
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