いきなりの余談で恐縮なのだが、「君たちはどう生きるか」がアカデミー賞を受賞した時の鈴木敏夫プロデューサーの言葉にうなってしまった。なにしろ第一声が「オスカーは買えるんですよね」だったのだから。彼はその後に屈託のない笑顔で「僕、三つ注文しちゃいました」と続けた。つまり、「買った」のは「トロフィー」というオチがあった。 テレビの報道番組で見たので発言の前後はあったのだろう。でも、「オスカーは買える」という端的な言葉が、古今東西、あらゆる「賞」と呼ばれるものにまつわる不透明さへの皮肉を含んでいるように思えたのだ。 その話をすると彼は「全くそんなつもりはなくて、その時頭にあったことを口にしただけ」と苦笑いしたのだが、あの自然体のさりげなさの中に権威におもねらず時流に媚びないジブリのありようが集約されていると思ったのは僕だけだろうか。 という話はさておき、10回にわたるこの連載のテーマは「音楽」であ