農業環境技術研究所の30年(5)生物多様性研究の系譜 1.はじめに 生物多様性研究領域では、第3期中期計画において耕作放棄地の拡大や農法の変化、外来生物の侵入などによる生態系撹乱(かくらん)のパターンの変化が農業生態系の生物多様性に及ぼす影響の解明を主要な研究課題としている。農業生態系における生物多様性を対象として研究する場合、生物の生息場所としての景観構造とそこに生息する生物の関係のほか、植物や昆虫等それぞれの生育、生理、生態、行動等の特性など、さまざまな研究分野の勢力を結集することが必要となる。また農業生態系における生物多様性を考える上での景観構造の重要性は、農業環境技術研究所の設立直後は資源・生態管理科で実施されていた多面的機能に関する研究(10 章)として実施されてきた。そこで本稿では、現在の生物多様性研究につながる植物と昆虫を対象としてきた研究の系譜を中心にその概要について述べる