ペレの表情が冴えない。ワールドカップなどの大きな大会になるとテレビ中継の合間にスタンドで観戦するペレの姿が映し出されるのがお約束になっている。しかし、ここ最近ペレがサッカーを楽しんでいる姿を見たことがない。なぜか日当たりの良い店先に置かれてしまった運の悪い鮮度の落ちたイワシのような虚ろな目で試合以外のものに視線を送っていることがほとんどだ。 ペレはサッカーへの興味を失っているはずだ。暑苦しいスタジアムでサッカー観戦をするよりも、自宅の涼しいリビングでダウントン・アビーを観ている方が断然いいと思っているはずだ。というか、あのテレビに映し出されたペレがあのペレなのかすら実は怪しいのだ。影武者なのかもしれないし、サッカー未経験の二代目ペレなのかもしれない。 ペレと聞いてサッカーを連想するのは仕方ないにせよ、ペレの生活の中心に常にサッカーがあるという勝手な思い込みはもういい加減やめてあげるべきだ。