KADOKAWAの角川歴彦会長が東京五輪の贈収賄事件にからんで逮捕されたのは出版にかかわる者には衝撃でした。SNSでもいろんな人の感想や意見が読めました。角川書店の思い出とか。その中で気になったのが、角川文庫の最終ページあたりに載っていた「発刊の辞」がなくなっているらしいという話題。 え? マジで? 文庫レーベルで特に老舗は、すべてではありませんが、レーベル発足にあたっての発行人の決意や読者への呼びかけを格調高く記すページを設けています。 有名なのは岩波書店創業者の岩波茂雄による「読書子に寄すーー岩波文庫発刊に際してーー」でしょう。昭和2年7月と記されています。「今や知識と美とを特権階級の独占より奪い返すことはつねに進取的なる民衆の切実なる要求である」「いやしくも万人の必読すべき真に古典的価値ある書をきわめて簡易なる形式において逐次刊行し、あらゆる人間に須要なる生活向上の資料、生活批判の原