――この小説は「現実」を愛する主人公・永岡が、同級生の石毛からカルト商法に誘われるところから始まります。永岡は同じく同級生だった斉川を教祖に仕立てようとする石毛の悪巧みを止めようとしますが、思わぬ展開に驚かされました。 村田「信仰」は「Granta Online」からの依頼で執筆しました。先方からとくにテーマの依頼はなかったのですが、当時は、なんとなく信仰について考えていた時期だったのだと思います。 喫茶店で執筆していると隣のテーブルでいろいろな勧誘が行われていることがよくあるんです。「あ、勧誘だ」って気がつくと、勧誘されている人に「騙されないで」「がんばって」と心の中で呼びかけてしまう。でも、それってあくまで自分の「安全で正しい世界」を押し付けているだけで、もしかしたら傲慢かなと思うことがあるんです。 例えばアルバイト先や大学などで、誰かが勧誘されて、その世界に行ってしまったとき。学校を