<NATO加盟は夢物語に終わるかもしれない。しかし、ウクライナ人にとって重要なのは、ロシアが戦後、再び攻撃できないようにするにはどうすべきかということ。「アステイオン」97号より「『かりそめ』の停戦 に抗うウクライナの人々」を全文転載> ウクライナの首都キーウで2015年春から1年半ばかりだが生活するなかで、しばしば感じることがあった。はたしてこの国は戦時下なのか、それとも平時なのかということである。 渡航前、私は、前年に起こった「尊厳の革命(マイダン革命)」や東部ドンバスでの激戦から、国全体が陰鬱な雰囲気に包まれているのではないかと想像していたが、暮らし始めると街は思ったよりも落ち着いており、見た目には「日常」の明るさを取り戻していた。 もちろん革命や紛争の犠牲者を追悼する記念碑や、軍の兵士募集広告を見るたびに、戦時下にあるという現実に引き戻された。 専門家などが集まる会合に出れば、いか