【破滅へと向かう世界から少年は小さな平穏を願うか焼け跡からの再生を望むか】 宮崎駿監督の10年ぶりとなる長編アニメーション『君たちはどう生きるか』を観た。事前の予想通りに、全体の流れはやはりジョン・コナリーの児童文学『失われたものたちの本』(創元推理文庫)を踏襲していた。母親を亡くした少年デイヴィッドが父親と共に再婚相手の屋敷を訪ね、そこで失踪した大叔父が残した書庫を見つける。そしてドイツ軍の飛行機の墜落に巻き込まれた中でデイヴィッドは異世界へと飛び、木こりに助けられ、ローランドという名の騎士に導かれながら大冒険を繰り広げる。 映画をすでに見終わったなら、なるほど『君たちはどう生きるか』のフォーマットに似通っていると思うだろう。異世界に行って最初に出会い助けられるのが、映画ではキリコという女性で児童文学では木こりという、アナグラムとも駄洒落ともつかない関係になっている。そこまでタネ本にする