『週刊新潮』 2016年3月31日号 日本ルネッサンス 第698回 アメリカのオバマ大統領が3月10日、ホワイトハウスのローズガーデンでの会見で語った。候補者指名争いで彼らが互いを非難し合う様は「不快(nasty)」で「私はそうしたこととは無関係」だ、と。 すると16日の「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」紙に、大統領は自身の責任に口を拭っているとの批判が掲載された。 民主党のバーニー・サンダース、共和党のテッド・クルーズ、ドナルド・トランプ3氏を含めて、候補者らの汚い罵り合いはオバマ政治への失望と憤りの反映であることに、当の本人が知らぬ顔をしているというのだ。 右のコメントを読みながら、私はあることを思い出した。オバマ大統領は自身が打ち立てた戦略の意味を理解しているのかと思わず疑ったケースである。 話は少し遡る。昨年10月、オーストラリア北部準州の州都、ダーウィンの港一帯を、中