「教育を無償化すればみんなが幸福になる」という通説の背後には、「教育は無条件によきもの」という信念がある。私はこれを疑わしいと思っているが、それは本題ではない。 自由経済で格差が生じるのは当然と考えるひとも、「貧しさのために教育機会を得られないのは正義に反する」との意見には同意するだろう。一流大学に入学する学生のほとんどが裕福な家庭出身なのは、欧米でも日本でも変わらない。貧しい家庭の所得を増やせば、教育を介して子どもはゆたかさを手にし、社会も好影響を受けるのだ。 だが、この主張はどこまで正しいのだろうか。 複雑な人種問題を抱えるアメリカでは、黒人貧困層に福祉の重点が置かれたため、白人保守派から「逆差別」との批判を受けることになった。これに反論するには、所得支援の効果を証拠(エビデンス)によって証明しなければならなない。 母子家庭の世帯所得を増やすには、行政からの生活保護、父親(別れた夫)か