<経済力にせよ軍事力にせよ、日本は一位とか二位とかを争う野暮な国じゃなくていい。『別品(べっぴん)』の国でありたい> コラムニストの天野祐吉さんが、昨年の没後に出版された「成長から成熟へ―さよなら経済大国」に書いている。 著しい少子化と高齢化で、日本はどの国も体験したことのない継続的な人口急減社会に入った。戦後70年。「成長」を至上の旗印に、走ってきた国のあり方が根本から問われている。世界の新しいモデルとなるような「別品」の国とは何か。 戦後、自民党は成長策を掲げる首相と、再分配策を軸にする首相が社会の変化に応じて入れ替わり登場し、長期政治の命脈を保った。前者の象徴が所得倍増論の池田勇人首相であり、後者の代表格が公共事業を分配して「国土の均衡」を目指した田中角栄首相であろう。 近年では小泉政権が規制緩和や医療費削減など「構造改革」で成長を目指したのに対し、民主党が子ども手当などの再分配を訴