退院前の夜というのは、勿論嬉しいものです。 やっと、そう広くは無い病院のベッドの4歳の寝る隙間に体を押し込むようにして眠らなくて良いし、お風呂にも、これは自宅でも4歳と一緒なのは変わらないけれど「10秒で洗髪チャレンジ」とかをしなくても良いわけで、食事だってちゃんとしたものを食卓で自分の箸で普通に食べられる。自宅はいいなあ狭いけど、そして実は賃貸なんだけど、そう思うのは毎回のことだ。 『入院』は少し不自由な、長い旅行に似ている。 そう思うのは、私が患児の付き添い親であって、病気の本人ではないからだろう。患児にとっては入院は入院だ。刺されるし、変な薬は飲まされるし、頼んでも無いのについてくる点滴台は邪魔でしかないし、外には出られないし、ひとつも面白い事なんかない。 それなのに、退院前の夜は微かに淋しい。 それは多分、この4歳がこの病院で生まれて、この病院で何度も手術をして検査も山もりして、2
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