12月19日午後、記者会見にのぞんだ日銀総裁・白川方明の表情は硬く、疲れが滲(にじ)み出ていた。 政策金利を0.3%から0.1%に引き下げた。個別企業の資金繰りを助ける支援策にも踏み込んだ。 「異例中の異例の措置です」。白川はそう強調したが、声に力はない。 利下げを期待していた政府や経済界に歓迎ムードが広がる中、日銀内部には無力感も漂った。「政策委員会はついこの間、何のために激しい議論をしたのか」 中堅幹部は空しさを隠せなかった。「総裁は、あれほど市場機能が大切だと訴えていたはずなのに」 わずか50日前のことである。 10月31日。日本銀行8階、ダークブラウンの壁に囲まれた会議室は、緊迫感に包まれていた。 「利下げ幅は0.2%とし、金融市場がしっかり機能するようにしたい」 「いや、金利変更は0.25%にすべきだ」 大きな円卓の周りに座っていたのは、日銀総裁、副総裁、審議委員、政府代表の計1