タイラー・コーエンの『創造的破壊』の主要テーゼは、「グローバル化が進展すると、異なる社会間の多様性は喪失するかもしれないが、同一社会内部の多様性は劇的に増加する」というものである。 確かにグローバリゼーションに伴う文化的財の膨大な交換・生産・消費によって、異なる社会間の多様性はかなりの程度失われてしまう。グローバリゼーションを批判する論者の多くの根拠は、この異なる社会間の多様性の喪失を問題視したものである。しかし、コーエンは他方で猛烈な勢いで、社会内部の多様性が発展している現象に注目している。 例えば、私たちは日本にいながらにして世界各国で生産された文化財(映画、音楽、ファッション、小説など)を消費可能である。インターネットの普及や様々な検索ソフト・翻訳ソフトの利用はこの現象を一気にすすめた。この「社会内部の多様性」が実現したことで、市場が拡大したことで、いままで注目されてこなかった文化的