森 永輔 日経ビジネス副編集長 早稲田大学を卒業し、日経BP社に入社。コンピュータ雑誌で記者を務める。2008年から米国に留学し安全保障を学ぶ。国際政策の修士。帰国後、日経ビジネス副編集長。外交と安全保障の分野をカバー。 この著者の記事を見る
11月13日金曜日。世界を震撼させる事件が、再びパリで起きた。 午後9時20分。パリ郊外の国立競技場スタッド・ド・フランス近くで突然、爆発音が響き渡った。爆発すると金属片が飛び散る榴散弾をベルトに満載した男が自爆し、近くにいた1人が巻き添えとなって亡くなった。その5分後、もう1人の男も自爆。スタジアムでは、フランソワ・オランド仏大統領も観戦するドイツ対フランスのサッカー親善試合が佳境を迎えていたが、この爆発についての連絡を受けて観戦を中断、静かにスタジアムを後にしたという。 5分後の9時25分。今度は、パリ市内で悲劇が起きる。東部10区の閑静な住宅街に連なるバーとレストランの前に、黒のセアト(スペインの自動車メーカー)車が止まった。中から出てきた複数の男は、手にしたカラシニコフの銃口を客に向け、15人を殺害。10人を負傷させた。 9時32分、10区の現場からさほど遠くない11区で、複数のレ
2015年11月1日、フランス通信社(AFP)は「中国の闇っ子の暗い生活(Dark lives of China’s‘black children’)」と題するレベッカ・デイビス(Rebecca Davis)記者が執筆した記事を配信した。表題にある‘black children’ という言葉は、中国語の“黒孩子”を英語で表記したもので、「戸籍のない子供」を意味し、日本語では「闇っ子」ということになる。 AFPが11月1日付で「闇っ子」に関する記事を配信したのは、10月29日に閉幕した中国共産党第18期中央委員会第5回全体会議(略称:5中全会)が同日発表したコミュニケに起因する。コミュニケには、中国共産党が1980年頃から今日に到るまで35年間継続して来た「1組の夫婦が出産してよい子供を1人だけ」とする“独生子女政策(一人っ子政策)”を完全に放棄して、「1組の夫婦が出産してよい子供を2人まで
(前回から読む) 日中が衝突したら韓国は中国側に付くのか――。神戸大学大学院の木村幹教授と展開を読む(司会は坂巻正伸・日経ビジネス副編集長)。 半妖怪の韓国 前回は日韓関係が悪化し、信頼関係も消えた今こそ、紛争の予防を真剣に考える必要があるとの話でした。 鈴置:日韓関係が良くなることは――日本人が韓国に気を許すことは今後、まずないと思います。「韓国はねずみ男」との認識が広まったからです。 「早読み 深読み 朝鮮半島」の書籍化第1弾である『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』で使った「ゲゲゲの鬼太郎」モデルですね。以下、プロローグの「中国の空母が済州島に寄港する日」から引用します。 読んでくれた知り合いの1人は「韓国って『ゲゲゲの鬼太郎』に出てくる『ねずみ男』のような国なのですね」と言った。確かに、米国たる目玉親父や、日本たる鬼太郎の側にいるようで、肝心な時は妖怪側――中国につくのが「ねずみ
東芝の米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)で、計1600億円の巨額減損が発生していたことが日経ビジネスの取材で分かった。WHの単体決算は2012年度と2013年度に赤字に陥っていたが、本誌が指摘するまで東芝は事実を開示しなかった。 これまで東芝は、原子力事業については一貫して「順調」だと説明し、WHの売上高や利益、資産状況については明らかにしてこなかった。5月に発足した第三者委員会もWHの減損問題については踏み込んでいない。 本誌(日経ビジネス)が独自に入手した内部資料によると、WHの実情は東芝の説明とは大きく乖離している。経営陣の電子メールなどを基に、東芝とWHが抱える“秘密”を明らかにしていく。
佐藤 浩実 日経ビジネス記者 日本経済新聞社で電機、機械、自動車を6年間取材。13年4月に日経ビジネスへ。引き続き製造業を担当。 この著者の記事を見る
1962年8月30日、第二次世界大戦後、初となる国産旅客機「YS-11」が名古屋空港から初飛行した。そして2015年11月11日朝、2番目となる国産旅客機「MRJ」が、同じ名古屋空港から飛び立った。 MRJは安村佳之機長、戸田和男操縦士、他3名の計測担当技術者が搭乗して、県営名古屋空港から離陸。太平洋上の防衛省訓練空域で、左右の旋回、上昇、下降、および着陸の模擬飛行を実施したのち、午前11時2分に同空港に着陸した。脚は飛行中も下げた状態で固定。主翼のフラップとスラットも下げ位置で固定。最高速度は時速280km、最高高度は1万5000フィートだった。安村機長は初飛行後の記者会見で、「着陸模擬時に気流が荒れたが機体は安定しており、機のポテンシャルの高さを感じることができた」と語った。 これからは主に米国内で型式認定のための飛行試験を進め、2017年春からカスタマーへの機体納入を開始する予定だ。
1969年夏は、様々な出来事が起きたため人々に強く記憶されている。人類が初めて月面に降り立った。野外ロックコンサート「ウッドストック」が開かた。そして、米軍がベトナムから撤退を始めた。国際通貨基金(IMF)が「特別引き出し権」(SDR)を創設したのも1969年夏のことだ。このことは、同じ時期に起きた出来事の中でもとりわけ注目すべき事象というわけではない。SDRは人工的な準備通貨であり、世界の金融システムにおいて脇役にすぎない。だが今後数週間にわたって、中国がSDRにスポットライトを当てることとなろう。 問題となっているのは、SDRを構成する通貨バスケットにIMFが人民元を含めるかどうかだ。IMFは結論を11月末に下すと見られている。通貨バスケットは5年ごとに見直しが行なわれ、その一環として人民元の問題が検討されている。1990年代末以降、SDRは4つの通貨――ドル、ユーロ、ポンド、円――で
木村幹(きむら・かん) 神戸大学大学院・国際協力研究科教授、法学博士(京都大学)。1966年大阪府生まれ、京都大学大学院法学研究科博士前期課程修了。専攻は比較政治学、朝鮮半島地域研究。政治的指導者の人物像や時代状況から韓国という国と韓国人を読み解いて見せる。受賞作は『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(ミネルヴァ書房、第13回アジア・太平洋賞特別賞受賞)と『韓国における「権威主義的」体制の成立』(同、第25回サントリー学芸賞受賞)。一般向け書籍に『朝鮮半島をどう見るか』(集英社新書)、『韓国現代史』(中公新書)がある。最新作の『日韓歴史認識問題とは何か』(ミネルヴァ書房)で第16回 読売・吉野作造賞を受賞した。ホームページはこちら 木村:「日韓関係はべったりとした昔には戻らない」。こう言い続けてきましたが、ようやく政治家や官僚の方々――日本の政策を決める人々に理解してもらえるようにな
来年1月に台湾の総統選挙が迫るなか、馬英九総統が、いきなり今月7日、シンガポールで中国共産党中央総書記の習近平国家主席と会談した。1949年の中台分断後、初めて中台の最高指導者が会談するという歴史的事件ではあるし、メディア関係者は当然大騒ぎなのだが、台湾世論も中国国内も国際社会も何か白けた空気である。 支持率一桁の超絶不人気の、引退間際の、しかも国民党主席でもない馬英九が、習近平と会って互角に渡り合えるはずもない。一方、習近平は国内では権力闘争の真っ最中、党内でも国際社会でも政敵に足をすくわれないよう、細心の注意を払わなければならない時期だ。CCTVは馬英九の肉声を伝えず、襟の青天白日バッジにまでモザイクをかける小心ぶり。彼らは、いったい、何のためにこんな会談を今の時期に、急に開いたのか。 馬英九、ロスタイムの個人プレー オンラインで、この世紀の瞬間(?)を私も見たのだが、習近平も馬英九も
11月8日、ミャンマーでは2010年以来、5年ぶりに総選挙が実施された。2011年の民政移管後初の総選挙で、アウン・サン・スー・チー党首が率いる野党の国民民主連盟(NLD)が過半数を超える議席を獲得し、圧勝したもようだ。連邦選挙委員会(UEC)は、正式な結果発表には少なくとも2週間はかかるとしている。ロイター通信は、NLD広報担当者が独自の調査結果から「7割以上の議席を確保した」と明らかにしたと伝えている。 第一次スー・チー旋風が吹き荒れた1990年の選挙では、NDLが議席の8割を獲得して圧勝したにもかかわらず、軍事政権が政権を委譲しなかった。だが、旧軍事政権の流れを汲む与党の連邦団結発展党(USDP)代表のテイン・セイン大統領は8日、首都のネピドーで投票した際に「我々が勝っても負けても国民の判断だ」と述べて、たとえ敗北しても受け入れる意向を示している。投票翌日の9日には、テイ・ウーUSD
日本郵政グループ3社の株式が11月4日、東京証券取引所に上場した。日本郵政は売り出し価格1400円に対して1631円の初値を付けた後も買われ、初日の終値は1760円となった。傘下のゆうちょ銀行は売り出し価格1450円に対して初値は1680円(初日終値は1671円)、かんぽ生命は売り出し価格2200円に対して初値が2929円(同3430円)と、いずれも売り出し価格を大きく上回った。 終値ベースで3社の時価総額を単純合算すると17兆4975億円。1987年に上場したNTT以来の大型株式公開は、予想以上の“成功”を収めたと言っていいだろう。だが、親会社と傘下の子会社2社が同時に上場するという「いびつさ」を忘れてはいけない。今後、このいびつな構造が3社の経営にとって大きな「くびき」になっていくことは間違いないからだ。 「異例の親子上場」の先にあるもの 新聞各紙は「異例の親子上場」とは書いているが、
東京にある「坊主BAR」。カウンターの向こう側で接客する僧侶たちは、この世の快楽に対する禁欲を説くどころか、まるで反対のことを奨励する。釈迦にたどり着くにはいろいろな道がある――店主を務める僧侶の藤岡善念氏は客のためにジントニックを作りながらそう語った。「気づきは、どんな会話においても得られるものです。私たちはそのための機会を提供しています」。 教義のこうした捉え方は、世間との接点を保とうとする日本の仏教徒がときに取り入れるものだ。日本全国には7万7000の寺がある。その一部はカフェを経営したりファッションショーを催したり、ペットの葬儀を執り行ったりしている。それでもなお、毎年何百という寺が閉鎖しているのが現状だ。日本の仏教の危機に迫った『寺院消滅』を著した日経ビジネス記者の鵜飼秀徳氏は、2040年までに日本の寺院の4割が消滅するかもしれないと悲嘆する。 京都の鹿苑寺(通称、金閣寺)の舎利
10月26日から北京で開催されていた中国共産党第18期中央委員会第5回全体会議(略称:5中全会)は10月29日に閉幕したが、その直後に発表された会議の決議事項を取りまとめた、漢字約6000字からなるコミュニケには以下の文章が含まれていた。 【原文】促進人口均衡発展, 堅持計劃生育的基本国策, 完善人口発展戦略, 全面実施一対夫婦可生育両個孩子政策, 積極開展応対人口老齢化行動。 【訳文】人口の均衡ある発展を促進し、計画出産の基本国策を堅持し、人口の発展戦略を完全なものとするために、一組の夫婦が出産してよい子供を2人までとする政策を全面的に実施し、人口の高齢化に対応する行動を積極的に展開する。 この漢字57字で構成された文章こそが、中国共産党が1980年頃から今日に到るまで35年間継続して来た「1組の夫婦が出産してよい子供を1人だけ」とする“独生子女政策(一人っ子政策)”を完全に放棄して、「
3年半ぶりに実現した日中韓首脳会談を米国はどう見ていますか。 高濱:日中韓首脳会談後に発表された共同文書を読んだ米国務省OBの一人は、私にこうコメントしました。「予想通り、具体的な問題の解決は先送りされた。その点ではノー・サプライズ(驚くようなことはなかった)、ノー・ブレークスルー(劇的な突破口は開かれなかった)だった。が、センシティブな政治問題に踏み込むことなく器作り、つまり継続した対話の場作りに徹することで解決への糸口を探り当てた」。 「儒教的発想」で「器作り」に専念した首脳会談 他方、宗教社会学者のディクソン・ヤギ博士はユニークな見方をしています。同博士は宗教の視点から国際政治を俯瞰してきた学者。自称「クリスチャン・ブディスト(仏教徒)」で、日本の神道や儒教にも造詣がある人です。 「自分の信念を絶対に曲げない3人が集まって、わだかまりを解消しようとするときには、相手の嫌がる話は避ける
中国でおよそ35年間続いていた"一人っ子政策"が廃止された。これからはどんな夫婦も二人まで出産してもいい"二人っ子政策"になるという。これは目下、目立った成果が報じられていない五中全会(18期中央委員会第五回全体会議)で決定されたほぼ唯一の"朗報"であり、とりあえず歓迎の声で迎えられている。 早速、"ご近所で子づくりに励む声が聞こえる"、"二人目解禁になってから、夜の微博の書き込みが減った"といったつぶやきがネットの上で散見され、東京株式市場でも紙おむつや粉ミルクなど新生児関連の株価が上昇した。来年は中国でベビーラッシュが起きるであろうと言われている。なので、ポジティブなニュースとしてとらえられるべきなのだが、ここであえて懸念もあることをまとめておきたい。 五中全会「唯一の朗報」が抱える懸念 五中全会は25日から29日まで開かれ、最終日にコミュニケが採択された。蛇足ながら中央委員会全体会議
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