先日、日本西洋史学会の大会で「ロシア=ウクライナ戦争とロシア史研究」という報告をした。その内容は来月くらいに出る『歴史学研究』にも論文として発表される。報告で扱ったのは、現在目の前で起こっているロシア=ウクライナ戦争に対して、歴史研究者はどのように向き合うことができるのか、という問いである。歴史研究者は過去を研究対象とするので、現在起こっている事態に対してはコメントできない、というのが一般的な見方なのであるが、それでも何かを語りたいときに、どうすればよいのか、そのあたりを理詰めで考えておこう、という趣旨であった。 報告後にやや困惑したのは、質問の内容が、報告中で触れられた池田のロシア史像にもっぱら関わるものであったということである。プーチン政権はロシア史の長期的パターンに回帰しているので、歴史研究者としても正面から取り組む必要がある相手だ、ということを言ったわけであるが(もちろんこれは報告