犯罪のニュースを見て怒りを覚えたり「犯人にも同情の余地がある」と思ったりすることは誰しもあるでしょう。しかしその感情の揺れを反映しない、させないものとして、「刑法学」は存在しているのです。ちくまプリマー新書『刑の重さは何で決まるのか』より本文の一部を公開します。 ドストエフスキーの『罪と罰』 さて、量刑に至る「長く曲がりくねった道」をたどるとき、最初の関門は「犯罪行為」です。まずは、次の物語からスタートしましょう。 法学部を中退した貧しい青年ラスコーリニコフは、生きていることの不快さから、いつもイライラしていました。彼は、人間にはナポレオンのような特別な人間と、歴史の材料にしかならない普通の人間とがいて、自分は前者であることを証明するために、金貸しの老婆とその妹を斧で殴り殺し、わずかの金を奪います。証拠を残さず、屋根裏の自室に戻りますが、そこから、彼は激しい恐怖と孤独感に苦しめられます。そ