紹介 戦争全体の把握にはデータが肝要だ。特に死者数のデータは、戦争の規模、相手との優劣比較で最も説得力を持つ。ただ発表されるデータが正しいのかは常に疑念があるだろう。ウクライナ戦争での戦死者数についても、ウクライナ、ロシア双方から発表される数字は異なる。では、そうしたデータはどのように集められてきたのか。 戦場での死者数は、総力戦となった第1次世界大戦以降、国家による将兵だけの把握では難しくなり、赤十字国際委員会、国際連盟といった国際機関が介在していく。しかし第2次世界大戦後、特定地域での内戦・紛争・ゲリラ戦が頻発。政府側・反政府側で異なる数字が発表されていく。大国間対立で国連が機能不全に陥るなか、国際的な人道ネットワークが、先進各国や国連の支持を受け、死者数の調査・精査を行い発表していく。 本書では、特に1960年代以降のベトナム戦争、ビアフラ内戦、エルサルバドル内戦から、第3次中東戦争
独立と自由を守るために築いた「秩序」の防波堤。集団安全保障、外交的庇護、武力行使の禁止……国際秩序のドクトリンは、西欧の支配に抗うためにラテンアメリカ諸国がつくったものだった。スポットライトを浴びなかった国際法の実質的起源を明らかにした瞠目の書。「西洋から発展した国際秩序」の常識がくつがえる。 中井 愛子(なかい あいこ) 大阪市立大学大学院法学研究科准教授(国際法)。中央大学法学部卒業。ブリュッセル自由大学欧州学研究所修了(DES)。パリ第1大学大学院博士課程中退。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。日本学術振興会特別研究員(PD)、外務省経済局調査員、京都大学白眉センター・法学研究科特定助教を経て、2020年より現職。 主な著作に、共著書として、Guerrero, J. C., ed., Perspectivas multidisciplinarias sobre
本稿は、主権概念を手掛かりに、国際社会における近年の介入の在り方について分析する。とりわけ、2010年代のリビア紛争とシリア紛争を事例として、オバマ政権期のアメリカによる介入政策を中心に検討する。リビアとシリアへの介入は、いかなる主権領域での、いかなる介入だったのか。本稿は、この時期のアメリカの介入政策が以下のような特徴を備えていたことを明らかにする。この介入政策は、 (1) 反政府勢力が結集し一体化するよう促し、 (2) 国際的な政治的承認を与えて段階的に外的主権を移行させ、 (3) 最終的に反政府勢力が現政権を倒し、新しい安定した統一政府 (国内主権) を樹立するよう助力するものである。本稿はこの政策をその特徴から 「及び腰の介入」 (reluctant intervention) と呼ぶが、これは現地勢力 (エージェンシー) の特質にその成否を依存するものだった。リビアとシリアの事例
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く