(20170522誤字修正版)明治22年(1889)7月28日に熊本を襲った地震の概要を踏まえつつ、新たに発見した「数え歌」資料を用いて、当該地震が人々にどのように認識、共有、記憶されていたのかを追究した。分析の結果、明治22年熊本地震の数え歌は、当時の歌刷物を意識した書式となっており、表記に東北方言が反映されていることから、東北地方で受容されたことが窺えた。また、内容は実情以上の惨状や恐怖が演出...されているものの、話の末尾は突然孝行者が金甕を見つけた話となり、近世昔話的な締めくくりとなっている。後に起こった濃尾地震や関東大震災時に伝承された数え歌では、ひたすら地震の惨状と恐怖が語られるのに対し、明治22年熊本地震の数え歌は、近世近代移行期に作られた時代相を反映した展開となっていることが明らかになった。最後に、これまで明治22年熊本地震が歴史の中に埋没してきたのは、かような「数え歌」等