中世ヨーロッパにおいて「聖書に次いで読まれた」とされるアレクサンドロス・ロマンスの中核となるのが、伝カリステネスによる『アレクサンドロス大王物語』です。アレクサンドロス大王は、その生涯において歴史に巨大な足跡を残しましたが、死後にもそのイメージは大きく広がっていきました。多くの人の想像力を刺激し続けた大王の伝説とは如何なるものだったのでしょうか。古代ギリシア史・マケドニア史の研究者である澤田典子先生(千葉大学教授)に解説いただきました。 わずか一〇年で前人未到の大征服を成し遂げ、三二歳の若さで世を去ったアレクサンド ロス大王は、人々を惹きつけてやまない、魔力のような輝きを放つ世界史上稀有の存在で ある。そんなアレクサンドロスの生涯は、まさに無数の神話や伝説に彩られている。当時の知られうる限りの世界を征服した彼の突然の死は、人々の想像力を限りなく刺激した。 アレクサンドロスの短くも華々しい生
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