真理を探究する自然科学と哲学、現代に通じるデモクラシーをも生み出し、「ヨーロッパの源流」とされてきた古代ギリシア文明。しかし、近年の研究では、その意外な成り立ちと暗部も照らし出されている。「地中海世界の歴史〈全8巻〉」の最新第3巻『白熱する人間たちの都市』(本村凌二著)と、講談社学術文庫の新刊『賄賂と民主政 古代ギリシアの美徳と犯罪』(橋場弦著)で見えてくる古代社会の闇とは――。 哲学者には「余暇」と「奴隷」が必要? メソポタミアからローマ帝国にいたる文明の歴史を、古代ローマ史研究の第一人者・本村凌二氏が新たな視点で描く「地中海世界の歴史〈全8巻〉」(講談社選書メチエ)。すでに刊行された第1巻・第2巻は、発売まもなく重版が決定し、大きな反響を呼んでいる。 シリーズ第3巻となる『白熱する人間たちの都市』が取り上げるのは、エーゲ海とギリシアの文明だ。 〈エーゲ海は紺碧に彩られた人類の愛する海で