福田和也『遥かなる日本ルネサンス』(文藝春秋) とんかつを福田和也と一緒に食べたことがある。今となっては定かには思い出せないが、福田がまだSFC(慶応大学環境情況学部)の助教授に就任する以前、慶応大学文学部(三田)の非常勤講師をしていた頃だから、1990年代初めのことである。 私は1991年秋には福田と多少の面識を得ていた。1990年に滞在していた米国の大学図書館で、日本の言論状況を知るべく偶々読んだ雑誌に掲載されていた福田の『遥かなる日本ルネッサンス』の一部に接し、若いらしいが聡明な「保守」の登場が、記憶に刻まれていた。 1991年の帰国後、これまた偶々、ある酒場で遭遇して互いに自己紹介したのが最初である。ただ、それ以前から「福田」という名前は知らずとも、コラボラトゥールをやっている面白い研究者が、国書刊行会の周辺にいるらしいことは、蓮實重彦から漏れ聞いていた。 『奇妙な廃墟』(1990