<大村泉(おおむらいずみ):東北大学教授> 総合学術誌『ネー チャー』でも報道された井上明久東北大学前総長の研究不正疑惑と大学運営における私物化問題は、東北大学関係者有志の4年にわたる徹底的な調査・研究によって究明され、その全貌が明らかにされた。研究不正と大学の私物化は、東北大学という一大学の問題ではない。日本の大学行政・研究費政策の歪んだ構造的背景に起因するものである。 この度、東北大学有志 による調査・研究を集大成した報告書が『研究不正と国立大学法人化の影』と題して近く刊行される。同書において、2004年の国立大学法人化によって、研究資金をめぐる大学間、個人間の競争が政策的に強化され、そのことが、研究不正発生の温床になった。さらに、大学と学会の「ムラ」的体質が、研究不正を隠蔽・継続させる要因であり、助成金という名で税金が投入されている大学の私物化の背景であることが解明されている。 日