「100万円玉」を1億2000万枚鋳造して、全国民に1枚ずつ給付する。あるいは、「1兆円玉」を20枚鋳造して、景気対策の財源に充てる。荒唐無稽に聞こえるが、マネーとは何か、デフレ対策とは何かを考える上で、意味のある思考実験である。結論から言えば、中央銀行が健全な金融政策から逸脱しないのであれば、100万円玉や1兆円玉は、日本経済をデフレから救える数少ない強力な手段である。 バブル後の日本経済の長期低迷は、失われた10年、20年などと表現される。しかし資産バブルが崩壊しても、実際には日本のマクロ実物経済は何も失っていない。国土の評価額は3分の1に減ったかもしれないが、38万平方キロメートルの国土面積は全く減っていない。ストックの評価額が変わったからといって、フローの実質GDPやその成長率が長期にわたって低迷する必然性はない(脚注1)。 日本経済の問題は、バブル崩壊後長期間にわたって、物価が下