取材・文/柿川鮎子 撮影/木村圭司 近代化を急いだ明治政府は、芸能や文化を厳しく統制した。怪談が上演できなくなったり、盆踊り、獅子舞なども厳しく規制された。展覧会を禁じられた絵画もあった。江戸の大名家や文人達が所有していた、焼絵である。 焼絵とは何か。長年、焼絵の調査を続けてきた研究家、田部隆幸さんによると、焼絵とは金属製のコテや火箸を熱して紙や絹、木などに絵画や文字を描く作品で、その歴史は古く、『続日本紀』や『平家物語』、『盛衰記』などでも焼絵の記述があるという。 「墨やペンなどの道具が無くても、火を使って絵が描ける焼絵は、私達が火を使うようになった原始時代から伝わる、もっとも古い絵の技工のひとつだったと考えられます」と田部さん。 日本では焼絵を焦画、焼画、屋記絵、火筆画、烙画と言い、中国・韓国では烙画、欧米ではPyrographyである。紙や木、絹のほか、皮革、竹の皮、竹などに描いてき