宮台真司:こんばんわ。この映画は喜劇、コメディと司会の方がおっしゃったんですけど『人間合格』に共通している気がするんですよ。僕の解釈を申し上げるのは申し訳無いのですが、たとえば『人間合格』であればポニー牧場にある夢が家族であり、病気の妻をケアする役所広司という背景が家族の空白を埋めるのですが何も無いという感じがあります。最近、オウム真理教を巡る地域住民との吹き上がりがあるじゃないですか。あれを見ると黒澤映画っぽいなって思うんです。元々地域共同体など崩れていて地域の絆も何も無いんですよ。そこへオウムがやって来るとあたかも地域の絆があったかのようの盛りあがるんですよね。家族でも同じように娘は親父のことを毛嫌いしてるのに、そこで何かが起こるとあたかも家族の絆があったように盛りあがるわけです。それに近いような感じを黒澤映画に感じていて、本作も家族とのスケールではなく世界全体を空っぽというイメージが