7月27日付 天声人語(朝日新聞) 数学者の森毅(つよし)さんは京大の教授だったころ、授業で出席をとらなかった。あるとき、出席をとってほしいと学生が言ってきた。単位取得に出席を考慮してほしい、ということらしい。そこでこう答えたそうだ▼「よっしゃ、出席してないヤツは少々答案の出来が悪くても同情するけど、出席したくせに出来の悪いのは容赦なく落とすぞ」。学生は黙ってしまったそうである。自身、学生のころよくサボった。父親には「学校を休んだ日は、学校へ行くより充実した一日を送れ」と言われていたそうだ▼さまざまな逸話や、社会問題へのユニークな発言で「最後の名物教授」と親しまれた森さんが亡くなった。退官後は自ら「老人フリーター」や「言論芸能人」と称していた。自分にも他人にも、自由と放任を貫いた人だった▼発言はしなやかで飄々(ひょうひょう)、ときに過激でもあった。だが姿勢は一貫していた。「新しいことを始め