以下は湯浅誠氏の、大佛次郎賞受賞スピーチです。 90年代は、野宿の問題は自己責任論で片付けられてきました。問題の本質を直視しないうちに、貧困がどんどん広がってしまって、中間層に迫っている。自己責任論で片付けているだけでは問題はむしろ悪化するばかりだと、昨年暮れからの派遣切りで明らかになりました。 もちろん一気に政治や社会の見方が劇的に転換することはありません。個別対応・社会運動・政治的な折衝に同時に取り組まないと事態は好転しません。 貧困とは、単にお金だけではなく、豊かな人間関係や精神的な自信までも失って、生きる希望を見いだしにくくなる状態です。そして知的な、技術的な要素も含まれます。高度な知的財産と技術を保有した人たちが、その“溜め”を社会全体のために底上げするようにして活用する。私は、そのような循環を夢想しています。 論壇の役割は研究と教育、そして知識の普及・還元があるでしょう。市民と