劇中、草薙水素は「とびきりのエースだったせいで、人より長生きし」、ゲームから脱却した人間として描かれる。死に続ける人間から、いき続け、死に続ける人間を観察し続けるへと立場が変化する。それはリアリティが覚束ない現世から脱却し、超越的な視点を持ったことを意味する。このように超越的視点を持つことは『Avalon』でも『攻殻機動隊』でも描かれてきた。『Avalon』の主人公、アッシュは最後にゲーム的世界から脱却する(そしてそれを承認することによって物語は閉じられる)。『攻殻機動隊』においても。また、『イノセンス』ではネットの世界へと超越した草薙素子はバトウを見守り続ける、観察し続ける存在として登場する。つまり、『スカイ・クロラ』と『イノセンス』における2人の別な「草薙」はほとんど同じ視点を持った存在だと言える。 しかし、『スカイ・クロラ』での草薙が、その視点に立つことに耐えられない。自ら死を求める