近年、生物学的な性別だけでなく、社会的・文化的に構築されるジェンダーについての理解が少しずつ深まってきています。性別とジェンダーは必ずしも一致するものではなく、多様な性自認やジェンダー表現が存在することが認識されるようになってきました。 こうした社会の価値観の変化は、デザインの世界にも大きな影響を与えています。完璧とは言えないまでも、デザイナーたちは性別やジェンダーの多様性を尊重したデザインを志向しています。 その最たるものは、トイレのピクトグラムデザインではないでしょうか。今から50年以上前、1964年の東京オリンピックで使用されたトイレ用のピクトグラムデザインはこのようなものでした。 チーフデザイナーの田中一光氏を筆頭にデザインされたこのピクトグラムは、女性がまるでパニエをはいているかのようなシルエットになっています。特にウエスト回りは華奢な細さが強調され、過剰に女性性を表現しているよ