行動経済学×医療 なぜ私たちの意思決定は不合理なのか? 患者の意思決定や行動変容の支援に困難を感じる医療者は少なくない。 本連載では,問題解決のヒントとして,患者の思考の枠組みを行動経済学の視点から紹介する。 [第10回]自身の行動経済学的特性を知る 大きな影響を与える3つのバイアス 平井 啓(大阪大学大学院人間科学研究科准教授) (前回よりつづく) その判断に,バイアスの影響は……〈場面A〉 患者 今の治療とは違う新しい方法があるって聞いたのですが,それを受けられないでしょうか? 医療者 だめです。今の治療法が最もよい方法なんです。以前,これでとてもよくなった患者さんがいます。 〈場面B〉 医療者 あの患者さん,痛みが出てきたようですし,そろそろ緩和ケアチームにコンサルテーションを依頼したほうがよくないですか? 同僚医療者 いや,今は治療の途中だし,痛みも一時的かもしれない。まだ依頼