医学部入試で女子受験生の点数を一律に低くし、合格しにくくしていた東京医科大の問題では、出産や子育てで働けない時期のある女性医師を敬遠する医療界の差別的な体質が浮かび上がった。「女性の排除は、働き方改革を妨げ、男性の命にもかかわる」。十九年前に小児科医の夫を過労自殺で亡くし、現在は講演活動などに取り組む中原のり子さん(62)=東京都中央区=は警告する。 (柏崎智子) 中原さんの夫、利郎さんは一九九九年八月、勤務する都内の病院の屋上から飛び降りた。四十四歳だった。遺書には、人手不足のため三十時間以上連続勤務となる当直を月に数回こなす疲労の蓄積や、女性医師が増える中で、結婚・出産の際に他の医師にかかる負担が放置されている状況への苦悩がつづられていた。