ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (9)

  • 文学の手法を取り入れた医療『ナラティブ・メディスン』

    患者と医者はすれ違う。たとえばこんな風に。 医者「いつ頃から、お酒をたくさん飲むようになったのですか?」 患者「夫が亡くなってからです」 医者「それは何年前のことですか」 患者は腹痛を訴えており、医者は彼女のアルコール摂取量が多いことに気づいている。医者も患者も、腹痛と飲酒量の関係性を疑っているが、それをどのように聞こう/語ろうとしているのかが異なっている。 医者は深酒をしていた期間を聞こうとする一方で、患者は、なぜ深酒をするようになったかを、自分の人生の物語として語ろうとしている。 夫が生きている間は飲まなかったとか、夫の死後は苦労が重なったといった話をさえぎり、医者は、最終的に知りたいことを聞き出せるだろう。だが、患者が語りたいことは残されたままだ。 彼女は、自分のたった一つの身体に起きた異変に戸惑い、恐れ、不安に感じている。痛みや苦しみに耐えながら、なぜそれが、よりにもよって自分の人

    文学の手法を取り入れた医療『ナラティブ・メディスン』
    DrPooh
    DrPooh 2021/05/25
    『形式を把握し、プロットを理解し、時間軸に沿ってストーリーの内容を追いかける。まさに、文学を味わう人がやっていることだ。文学が医療に役立つだなんて、思ってもみなかった』
  • いつ高齢者から運転免許を取り上げるか『高齢ドライバーの安全心理学』

    明らかに運転できていないドライバーがいる。一時不停止、信号無視、蛇行運転(ハンドルをちゃんと握れてない? わき見?)。運転席を見ると100%高齢者だ。こうした光景は毎週見かける。なぜ毎週か? わたしがサンデードライバーだからだ。 いっぽう、 高齢者の交通事故テレビや新聞をにぎわしている。認知症の高齢者が、歩行者をなぎ倒し、コンビニに突っ込むニュースはよくあるが、認知症に限らず、ほぼテンプレのように「アクセルとブレーキの踏み間違い」「高速道路を逆走」「何が起きたかよく覚えていない」というお決まりのパターンとなっている。 自動車の運転に必要なスキルとして、「認知」「判断」「操作」が挙げられる。加齢に伴い、こうした能力が低下することは事実だ。認知能力が低下することで判断が遅れ、操作が間に合わなくなる。このとき、車は1トンの凶器と化す。何歳でどの程度の能力低下があるかはバラつきがあり、一概に何歳

    いつ高齢者から運転免許を取り上げるか『高齢ドライバーの安全心理学』
    DrPooh
    DrPooh 2017/07/12
    『「できていたこと」が「できなくなる」を認めることは、難しいことに違いない』。ここは運転に限らず,必要な支援を受ける上で大事な点だと思います。
  • 日仏科学医療対話「なぜエラーが医療事故を減らすのか」まとめ

    日仏科学医療対話を見てきたので、まとめる。 日仏の研究者や医師が分野を超えて相互交流をするシンポジウムで、在日フランス大使館が後援する「日仏イノベーション・イヤー」のプログラムの一環になる。 10/19 講演会と討論会 「医療安全を考える なぜエラーが医療事故を減らすのか」 10/23-24 日仏医学コロック 「脳と心 日仏クロストーク」 10/26-29 数理モデルとその応用に関する国際会議 「自己組織化」 11/6 講演会と討論会 「憎むのでもなく、許すのでもなく レジリエンスを語る」 わたしが見てきたのは、「医療安全を考える」講演会&討論会[日仏会館]。ローラン・ドゴース氏が基調講演を行った。氏は『なぜエラーが医療事故を減らすのか』の著者で、この[レビュー]が縁となって講演会のことを知らせてもらった(山田様ありがとうございます)。 講演は、「犯人探しだけでは医療は良くなるのか?」と

    日仏科学医療対話「なぜエラーが医療事故を減らすのか」まとめ
    DrPooh
    DrPooh 2015/10/21
    想定外のインシデントに対応するためのレジリエンス・エンジニアリングについて。一般性よりもローカルスキルの蓄積が重要で,そのためには密室性が求められる。
  • 貧乏人は早く死ねというのか『老後破産』

    まだ暑い盛り「お年寄り、クーラーつけず熱中症、救急搬送8000円」というニュースを目にした。 省エネなのか冷や水か、場合によっては生命維持装置でもあるスイッチを切るなんて。こまめにON・OFFしても、浮く電気代はわずかなものらしい。電気代ケチって病院代かかるなんてギャグかと思っていたら、事情は違うようだ。その差ですら惜しむような、さらには電気代すら払えない高齢者の現実を、書で知った。 書では、年金だけでギリギリの生活をしている状況を、「老後破産」と位置づけ、必要な医療も受けられず、十分な事もとれない高齢者たちの実態を報告する。元はNHKスペシャル『老人漂流社会 "老後破産"の現実』(2014.9.28放送)をベースに、番組では紹介しきれなかった事例も併せて書き直している。番組は見逃していたが、報われない老後の現実が痛々しく、他人事とは思えない。 たとえば、港区の築50年のアパートに住

    貧乏人は早く死ねというのか『老後破産』
    DrPooh
    DrPooh 2015/10/16
    切り詰めるポイントがずれているんじゃないか,というのは個人レベルでも政策レベルでもあるような気がする。
  • 死を効率化せよ『医師の一分』

    「死を効率化すべき」という世になるのかも。 命には値段がある(一人一年、一千百万円)。「優先すべき命」とそうでない命がある(子供・労災を優先、自殺未遂・暴走族は後)。こうした音は、トリアージのような切迫した状況だと見えやすいが、普通は病院の壁の向こうにある。ひたすら死を先送りにしようとする現場では、「もう爺さん寿命だから諦めなよ」という言葉が喉元まで迫ったとしても、口に出すことは許されない。 だから、これを書いたのだろう。がんの専門医として沢山の臨終に立ち会ってきた著者が、現代医療の偽善を批判する。自己決定という風潮を幸いに判断を丸投げする医師を嘲笑い、90過ぎの老衰患者に、点滴+抗生物質+透析+ペースメーカーまで入れるのは、当に「救う」ことなのか?と疑問を突きつける。 毒舌を衒ってはいるものの、ナマの、辛辣で強烈な批判は、わたしが死ぬ際の参考になる。他人に振りかざしたなら「不謹慎」で

    死を効率化せよ『医師の一分』
    DrPooh
    DrPooh 2015/03/07
    『手厚い介護と医療サービスのない「在宅死」なんて、孤独死もしくは野垂れ死にと大差ない』。現実に即して言えばそう。
  • バカは死ななきゃ治らない『「ニセ医学」に騙されないために』

    パラシュートジョークを知っているだろうか。 弊社のパラシュートは安全保障つきです。故障したパラシュートをご送付いただければ、無償で新品とお取替えいたします。ですが、今まで一度たりとも苦情をいただいておりません 自然放置療法とか、ナントカが効くとか聞くたび、このジョークを思い出す。気の迷いをなくす鰯のアタマなら可愛いが、それに命を託してしまうほど愚かになってはいけない。わたしの理性や論理の"正しさ"は、気分や体調で簡単に覆る。大病をして精神的にも参ったとき、どれくらい愚かになれるか。予防として読む。 病気になり、気が滅入っているとき、病気の理由を周囲にぶつけたくなる。矛先が家族や医者に向くとき、医学以外にすがりたくなる。病院の治療だけで大丈夫か、他にできることはないか、藁を探してインターネットを掘削する。患者の不安につけこんで、い物にするのは「ニセ医学」だ。 ニセ医学とは、医学のフリをした

    バカは死ななきゃ治らない『「ニセ医学」に騙されないために』
    DrPooh
    DrPooh 2014/10/27
    状況次第では誰でも「バカ」になりうるという意味で「バカは死ななきゃ…」ということなんだろうけど。
  • 先生の赤本「入門 いじめ対策」

    一席ぶつのもいいが、具体的に動く。 子どもが通う学校で、「ウチは大丈夫か?」と呼びかけやアンケートが実施されているそうな。大仰すぎると水面下に潜るぞーとは思うが、やらないより○。わが家では、寝しなに子どもに語ったり、夫婦でしみじみ話したり、参考書で「予習」してる。天下国家やゆとり教育の荒廃を嘆いても無駄、具体的に動いている。そこで見つけた、先生にとっての赤を紹介しよう。 小・中・高のいじめ事例から自殺予防までを扱った一冊。「入門」と銘打つ150p.足らずのだが、中身はかなり充実しており、関連書籍の紹介は膨大といっていい。入門というより、むしろエッセンスだな。類書より優れているのはII章、「いじめの緊急対応」になる。今のいま、いじめの対応について悩んでいる先生方は、II章から読むべし。 とはいっても、特別な手法があるわけではない。「見守り」「個別指導」「保護者の面談」などは、容易に想像

    先生の赤本「入門 いじめ対策」
  • 「がんの練習帳」で予習する

    いきなり初体験はキツい。だから練習・練習。 受験であれ性交であれ、結婚であれ親業であれ、人生は初めてに満ちている。そして、初めてのときはドキドキ(ワクワク?)するもの。いざ番になって慌てないように、予行演習をするのだ。過去にさかのぼるように赤を解いたり、暗闇でコンドームを(裏表をまちがえずに)装着したり、さまざまなな「予習」を積んできた。 今回は、「がんにかかる」予行演習をする。日人の2人に1人はなるといわれており、目耳ふさいで知らんぷりにはムリがある。受験や性交と違って、突然・唐突・直接だから、準備なしの初体験は危険でもある。「あのときに訊いておけばよかった」とか「あんなガセに振り回された時間が…」というのが、ずっと後になって分かるから。もちろんそうなったら、ショックを受けるだろうし、かなり慌てることは間違いない。しかし、予習するとしないとでは雲泥だ。受験や性交がそうだったようにね

    「がんの練習帳」で予習する
    DrPooh
    DrPooh 2011/06/03
    『がんで死ぬということは「ゆるやかで、予見される死」を迎えることを意味する。これを、「死刑執行までの期限」と考えれば恐ろしいが、「人生の総仕上げ」の期間と捉えれば、まったく別のものになる』
  • 「本の現場」はスゴ本

    出版関係者は必読、好きな方も。 「はどのように生み出されいているのか?」「はどのように読まれているのか?」というテーマで連載していた記事をまとめ+補記したもの。たくさんの気づきと、手がかりと、新しいヒントが得られたスゴ。ヒントは追々このblogで実験していこうかと。 ■ ホントに「」は読まれなくなったのか? そんな疑問を、ずっと抱いている。たしかに通痛電車でケータイ(端末・ゲーム)を弄っている人は増えたけど、文庫を広げている人もいるわけで、それだけでケータイがを駆逐している!と煽られてもなぁ。図書館も盛況だし、子どもが通う学校も「朝の読書」にえらくチカラこぶ入れているようだ。 そして、「が売れない」というのも実感がわかない。いきつけの書店はいつもごったがえしており、レジに並ぶのがイヤでついAmazonを利用してしまう。村上某の新刊山に「お1人さま2冊限り」のタレ幕が下がってた

    「本の現場」はスゴ本
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