二郎が使う魚は、最高級の天然物。魚は、とれたての新鮮なものが鮨ネタとしておいしいとは限らない。味を決めるのは、「手当て」と呼ばれる職人技だ。魚の種類や状態に応じていったん寝かせたり、塩や酢でしめることで、魚のうま味を最大限に引き出す。 しかし、「手当て」を施した魚のすべてが客に出されるわけではない。例えば、同じ手当てを施した締め鯖でも、二郎が味を見て、その舌にかなったものだけが、鮨として握られ、残りは賄いに回る。こうした「無駄」が、うまい鮨を握るために欠かせないという。 二郎の鮨は、20カンの「おまかせ」というコース仕立てになっている。それは、半世紀以上鮨を握り続けてきた二郎が、試行錯誤の末にたどり着いた究極の20カン。すべてのネタがおいしく食べられるように、握る順番や、ネタの温度に細かな配慮がされている。そのドラマは、あっさりとした白身で幕をあける。鮨の王様・マグロの次には、さっぱりし