気づいたら二年くらい積んでました……。ハードカバーって本当に慣れなくって、年に一冊くらいしか手が伸びないです。重い重いジレンマなのです。 「美しい」という概念が、まるでファンタジー上の存在であるかのように語られる作品です。「美しい異形のかんばせ」を持った主人公七竈さんを中心として描かれる作品世界は、だから現実から丁寧に剥離されています。 過度に柔らかな、それなのに妙な生々しさや生臭さすら感じさせる文体は、どこかふわふわとしていて読者から現実感を奪います。登場人物どうしの会話も、現実には多分ありえないだろう奇妙な応答によって成り立っています。作品全体のあらゆる要素が、お話を現実から少しだけ異化させようと働いているかのようです。 この、会話のどこかふわふわとしたような感じは、桜庭さんのこれ以前の作品でもときどき感じることがありました。ただし本作では、そのふわふわによって全編が覆われています。
![ファンタジーが現実に揺り戻される直前で閉じた作品 -桜庭一樹『少女七竈と七人の可愛そうな大人』 - 魔王14歳の幸福な電波](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/e16606986fa4ffb5527a7b35e0d9733443751448/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fimages-fe.ssl-images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F513T9ZK5Z5L._SL160_.jpg)