言わずとしれた諸星大二郎の特集号……と言いたい所なんだけれども最近の若者は知らないらしい。文学で言えばカフカやボルヘスのようなことをやっていると言っても過言ではない諸星大二郎を知らないなんてもったいなすぎる! やはり自分が好きな作品の評が気になるところで、そういう意味では春日武彦の「感情のある風景」評が一番心をまさぐられた。この中で取り上げられている作品はどれも心に刺さって消えない名作ばかりである。 また反ユートピアという切り口から読み解く巖谷國士の論も、半分くらいは澁澤龍彦に言及してる脱線ぶりがほほえましい。円城塔の批評的な小説はいつもの通りで、テクニカルな筆致がさえている。 本書を読んでいて作品を読み返したくなったのはマッドメンだ。読んだ頃は全然知らなかったんだけれども、構造主義人類学に基づいてきっちりつくられているらしい。今の知識を使ってちゃんと読解したい。 ファンならば幻の初期短編